検証調書
検証調書
平成X年 7月24日
X県警察 司法警察員 警部 山下正司
被疑者 不明 に対する 殺人 被疑事件につき、本職は地方裁判所裁判官の発した検証許可状を 菅野康介 に示して、下記のとおり検証をした。
記
1. 検証の日時
平成X年 7月24日 午後二時五分から午後五時二十分まで
2. 検証の場所又は物
X県T市F区3丁目245番地グレイス305号及びその付近並びに岡本晴斗の死体
3. 検証の目的
上記における殺人事件の犯行日時、方法、目的を明らかにするため
4. 検証の立会人
X県S市N新町1151番地1
K大学生 菅野 康介(20)
X県T市F区3丁目245番地2
大家 稲羽 治郎(56)
5.検証の経過
(1)現場の位置及びその付近の模様
現場である被害者岡本晴斗方はX県T市F区3丁目245番地、海岸通りバス停留所からコンビニエンスストアと印刷会社との間の幅約7メートルの道路を約20メートル進み、田中耳鼻科と吉原太郎方の間にある幅約6メートルの道を右折して約30メートル進んだ住宅街にある、グレーのタイル張りの三階建て賃貸アパート305号室である。アパート西側のトタン屋根の付いた幅約80センチの階段を上がり、幅約1.2メートルの共有の廊下を東に突き当たった角部屋である。
共有の階段から順に、
301号 学生 山白 颯
302号 学生 高橋 皐月
303号 学生 畠山 三郎
が居住しており、304号は昨年10月より入居者がいない。
(2)被害現場の模様
専有面積は約20平方メートルの1K。見取り図3の示す通り、玄関から幅約80センチ、長さ約2メートルの廊下があり、玄関から入ってすぐ右側にはユニットバス、左側は幅59センチの洗濯機と幅約1.4メートルのキッチン、突き当りに7帖のリビングがある。
リビング入口から北側の正面奥には幅約1メートル、高さ約1.7メートルの窓があり、同室入口から左側には、枕を北側、足を南側にしてベッドがあり、足元にクローゼットがある。同室右側には北側から順に本棚、学習机、冷蔵庫と並んでいる。
中央の80センチ×60センチのダークブラウンの座卓は、約35度ずれて置かれている。(写真No10参照)
座卓の向こう側に被害者岡本晴斗が、頭をベッド側、足を本棚側にして、仰向けとなって倒れている。
座卓の下にカーキのチノパンツが裏返しになって丸められており、被害者がボトムを着用していないことから、被害者のものと思われる。
立会人菅野康介は、この男は私の恋人で、部屋に入った時、今見たままの状態で死んでいたと説明した。
(3)被害(死体)の状況
ア 被害者は成人の男性で、前記のように頭をベッド側、足を本棚側、左手はベッドと水平にして広げ、右手は折り曲げて仰向けになり、両脚はまっすぐ伸ばしている。
イ 被害者の身長は約1.63センチ、水色ストライプ綿素材の半袖シャツを着ているが、ボタンはすべて解かれており、両胸の乳頭が現れるほど開かれている。下半身はボトムは着用しておらず、右足首に紺のボクサーパンツが捻じれて絡まっている。
ウ 遺体は腐敗が進んでおり、皮膚は青銅色を呈し、全身膨大している。口の中には血痕で赤褐色に染まったタオルハンカチが押し込まれていた。頸部には電気コードが二回強く巻き付けられており、皮下に食い込み、周辺に擦過傷、両鼻と両耳から出血が見られる。被害者の左胸から腹部にかけて、幅約5センチ、長さ約10センチほどの範囲でやや黄色味を帯びた蛋白質成分のような斑痕がある。手に取るとこわばった触感があり、同様の成分が陰茎、肛門にも付着していることから干からびた体液であると思われる。死体の状況については別紙写真No15~No22を参照。
……
本検証を明瞭ならしめるため、見取図3枚、写真25枚を本調書末尾に添付した。
―――
岡本晴斗の遺体発見から三日後、捜査官のひとりであった巡査長・沢田文雄が突如行方不明になり、五台山の奥深くで首を吊っているのが発見された。
岡本晴斗殺害事件と関連した、第三者による自殺を偽装した他殺の可能性も含めて捜査を進めていたが、のちに岡本晴斗に付着していた体液が沢田文雄の精液であると認められ、沢田文雄の死因が自殺の可能性が高いことから、沢田文雄は岡本晴斗を殺害したあと自殺したものとみなされた。
こうして岡本晴斗殺害事件は、被疑者死亡による不起訴処分として幕を閉じたのである。
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平成X年 7月24日
X県警察 司法警察員 警部 山下正司
被疑者 不明 に対する 殺人 被疑事件につき、本職は地方裁判所裁判官の発した検証許可状を 菅野康介 に示して、下記のとおり検証をした。
記
1. 検証の日時
平成X年 7月24日 午後二時五分から午後五時二十分まで
2. 検証の場所又は物
X県T市F区3丁目245番地グレイス305号及びその付近並びに岡本晴斗の死体
3. 検証の目的
上記における殺人事件の犯行日時、方法、目的を明らかにするため
4. 検証の立会人
X県S市N新町1151番地1
K大学生 菅野 康介(20)
X県T市F区3丁目245番地2
大家 稲羽 治郎(56)
5.検証の経過
(1)現場の位置及びその付近の模様
現場である被害者岡本晴斗方はX県T市F区3丁目245番地、海岸通りバス停留所からコンビニエンスストアと印刷会社との間の幅約7メートルの道路を約20メートル進み、田中耳鼻科と吉原太郎方の間にある幅約6メートルの道を右折して約30メートル進んだ住宅街にある、グレーのタイル張りの三階建て賃貸アパート305号室である。アパート西側のトタン屋根の付いた幅約80センチの階段を上がり、幅約1.2メートルの共有の廊下を東に突き当たった角部屋である。
共有の階段から順に、
301号 学生 山白 颯
302号 学生 高橋 皐月
303号 学生 畠山 三郎
が居住しており、304号は昨年10月より入居者がいない。
(2)被害現場の模様
専有面積は約20平方メートルの1K。見取り図3の示す通り、玄関から幅約80センチ、長さ約2メートルの廊下があり、玄関から入ってすぐ右側にはユニットバス、左側は幅59センチの洗濯機と幅約1.4メートルのキッチン、突き当りに7帖のリビングがある。
リビング入口から北側の正面奥には幅約1メートル、高さ約1.7メートルの窓があり、同室入口から左側には、枕を北側、足を南側にしてベッドがあり、足元にクローゼットがある。同室右側には北側から順に本棚、学習机、冷蔵庫と並んでいる。
中央の80センチ×60センチのダークブラウンの座卓は、約35度ずれて置かれている。(写真No10参照)
座卓の向こう側に被害者岡本晴斗が、頭をベッド側、足を本棚側にして、仰向けとなって倒れている。
座卓の下にカーキのチノパンツが裏返しになって丸められており、被害者がボトムを着用していないことから、被害者のものと思われる。
立会人菅野康介は、この男は私の恋人で、部屋に入った時、今見たままの状態で死んでいたと説明した。
(3)被害(死体)の状況
ア 被害者は成人の男性で、前記のように頭をベッド側、足を本棚側、左手はベッドと水平にして広げ、右手は折り曲げて仰向けになり、両脚はまっすぐ伸ばしている。
イ 被害者の身長は約1.63センチ、水色ストライプ綿素材の半袖シャツを着ているが、ボタンはすべて解かれており、両胸の乳頭が現れるほど開かれている。下半身はボトムは着用しておらず、右足首に紺のボクサーパンツが捻じれて絡まっている。
ウ 遺体は腐敗が進んでおり、皮膚は青銅色を呈し、全身膨大している。口の中には血痕で赤褐色に染まったタオルハンカチが押し込まれていた。頸部には電気コードが二回強く巻き付けられており、皮下に食い込み、周辺に擦過傷、両鼻と両耳から出血が見られる。被害者の左胸から腹部にかけて、幅約5センチ、長さ約10センチほどの範囲でやや黄色味を帯びた蛋白質成分のような斑痕がある。手に取るとこわばった触感があり、同様の成分が陰茎、肛門にも付着していることから干からびた体液であると思われる。死体の状況については別紙写真No15~No22を参照。
……
本検証を明瞭ならしめるため、見取図3枚、写真25枚を本調書末尾に添付した。
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岡本晴斗の遺体発見から三日後、捜査官のひとりであった巡査長・沢田文雄が突如行方不明になり、五台山の奥深くで首を吊っているのが発見された。
岡本晴斗殺害事件と関連した、第三者による自殺を偽装した他殺の可能性も含めて捜査を進めていたが、のちに岡本晴斗に付着していた体液が沢田文雄の精液であると認められ、沢田文雄の死因が自殺の可能性が高いことから、沢田文雄は岡本晴斗を殺害したあと自殺したものとみなされた。
こうして岡本晴斗殺害事件は、被疑者死亡による不起訴処分として幕を閉じたのである。
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