第一部 2-2
大川さんと親しくなるごとに彼女の良さには気付くことばかりだし、一緒にいると小さなことでもあったかい気持ちになる。これはもしかしてすごくいい感じなんじゃないかと、淡い期待はほぼ確実なものになっていった。できるなら付き合いたいという願望は日に日に大きくなり、告白するなら早いうちがいいと唐突に決心した。一気に距離を縮めるためにこれから朝は大川さんと登校しようか。いつまでも妹と幼馴染とつるんでたんじゃ進展するものもしないし。そう思って軽い気持ちで理沙に相談したら、
「駄目! 絶対にダメッ!」
思いきり反対されてムッとした。理沙は思ったことをズケズケ口にするタイプだけど、頭ごなしに物事を否定するような奴ではないから尚更だ。
「なんで駄目なの?」
「え……だってずっと三人一緒だったし!」
「そんな依存するほどの仲じゃないだろ」
「大ちゃんだって寂しがるし!」
「俺はあいつと学校同じだからさぁ」
「それにしたって、なんでわたしたちが昇の恋愛に振り回されるわけ?」
それはそうだ。
「あ、お前が寂しいのか。別にこれから一人で行けって言ってんじゃないぜ。大智と二人で行けばいいんじゃないの?」
「なんでそうなるのよッ!」
バン! と机を叩かれた。ヒステリックになる理由が分からない。
「俺だってさぁ、そろそろ彼女作りたいのよ。ようやくいいなって思う子ができたんだぜ。卒業まであと少しだし、早く付き合いたいわけよ」
すると理沙は馬鹿だの阿呆だの散々喚き散らして俺の部屋を出て行った。「とっととフラれろ!」はいくら妹でもひどいんじゃないか? 理沙といい、今朝の大智といい一体なんなんだと、この時の俺は少しずつ狂い出した歯車に気付かないのだった。
翌朝、前日の素っ気なさはなんだったのかと拍子抜けするほど大智はいつも通りだった。相変わらず俺の寝癖をチェックするし、配信されたばかりのゲーム実況チャンネルの話なんかで盛り上がった。理沙は俺に対して怒っているようにも見えたが、さすがに大智に悟られるようなあからさまな態度は取らない。
俺だって三人で一緒にいるこの時間は好きだ。でもそれと同じくらい、俺は大川さんとの時間も増やしたいのだ。まだ付き合ってはないけれど、きっと大川さんも俺と同じように思ってくれているはずだ。
理沙と駅で別れて大智と二人になった時、俺は大智に大川さんとのことを包み隠さず打ち明けた。親しくなったきっかけや、俺が大川さんと付き合いたいと思っていることも。大智はずっと無言で俺の話を聞いていて、時折「そうか」と頷いた。
「でさ、もし大川さんとうまくいったら、朝は大川さんと登校しようかと思ってるんだけど、いいかな? 家がけっこう近いみたいで」
「まだ付き合ってもないのに、付き合ったあとの話かよ」
と、大智は少し笑った。
「いつ告白するの?」
「今日も放課後に一緒に本屋行くことになってるから、」
「じゃあ今日、するんだ」
「できたら、そのつもりかな」
「そっか。……ガンバレよ」
→
「駄目! 絶対にダメッ!」
思いきり反対されてムッとした。理沙は思ったことをズケズケ口にするタイプだけど、頭ごなしに物事を否定するような奴ではないから尚更だ。
「なんで駄目なの?」
「え……だってずっと三人一緒だったし!」
「そんな依存するほどの仲じゃないだろ」
「大ちゃんだって寂しがるし!」
「俺はあいつと学校同じだからさぁ」
「それにしたって、なんでわたしたちが昇の恋愛に振り回されるわけ?」
それはそうだ。
「あ、お前が寂しいのか。別にこれから一人で行けって言ってんじゃないぜ。大智と二人で行けばいいんじゃないの?」
「なんでそうなるのよッ!」
バン! と机を叩かれた。ヒステリックになる理由が分からない。
「俺だってさぁ、そろそろ彼女作りたいのよ。ようやくいいなって思う子ができたんだぜ。卒業まであと少しだし、早く付き合いたいわけよ」
すると理沙は馬鹿だの阿呆だの散々喚き散らして俺の部屋を出て行った。「とっととフラれろ!」はいくら妹でもひどいんじゃないか? 理沙といい、今朝の大智といい一体なんなんだと、この時の俺は少しずつ狂い出した歯車に気付かないのだった。
翌朝、前日の素っ気なさはなんだったのかと拍子抜けするほど大智はいつも通りだった。相変わらず俺の寝癖をチェックするし、配信されたばかりのゲーム実況チャンネルの話なんかで盛り上がった。理沙は俺に対して怒っているようにも見えたが、さすがに大智に悟られるようなあからさまな態度は取らない。
俺だって三人で一緒にいるこの時間は好きだ。でもそれと同じくらい、俺は大川さんとの時間も増やしたいのだ。まだ付き合ってはないけれど、きっと大川さんも俺と同じように思ってくれているはずだ。
理沙と駅で別れて大智と二人になった時、俺は大智に大川さんとのことを包み隠さず打ち明けた。親しくなったきっかけや、俺が大川さんと付き合いたいと思っていることも。大智はずっと無言で俺の話を聞いていて、時折「そうか」と頷いた。
「でさ、もし大川さんとうまくいったら、朝は大川さんと登校しようかと思ってるんだけど、いいかな? 家がけっこう近いみたいで」
「まだ付き合ってもないのに、付き合ったあとの話かよ」
と、大智は少し笑った。
「いつ告白するの?」
「今日も放課後に一緒に本屋行くことになってるから、」
「じゃあ今日、するんだ」
「できたら、そのつもりかな」
「そっか。……ガンバレよ」
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- Posted in: ★お前は幼なじみで、親友で
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