ゆめうつつ 15【R】
入口からベッドまでのほんの数メートルすら我慢できず、部屋のドアが閉まるなりきつく抱き締められた。司の胸に松岡の胸が重なる。互いの動悸が生々しく伝わり、合わさった心臓がひとつになったかのような錯覚をした、
暑さと興奮で呼吸が荒い。息継ぎを許さないほど唇を押し付けられて、酸欠になりそうだ。下唇をついばむだけのものから、舌を絡めて口内を犯す深いものまで、夢中でキスをする。苦しさのあまり少しだけ俯くと、額に小さくキスされた。
「おいで」
手を引かれてようやくベッドに倒れ込んだ。松岡に覆われ、じっと見下ろされると落ち着かなくて視線を泳がせてしまう。ふと松岡の左手に光る指輪を見た。松岡は司のために指輪をしていると五十嵐は言っていたけれど、やはり自分の意思を無視してはめられたものにはいい気がしない。司の視線に気付いた松岡は、指輪を外した。
「もう必要ないよな」
指輪がカーペットの上にトン、と落ちる。
「目を合わせるのはまだ苦手なんだな」
背けられないよう、「こっちを見ろ」と頬に手を添えられる。一度目が合うと金縛りにあった。茶色の眼と視線が絡まり、そして距離が縮まったと思えばまた強くキスをされる。
腹を決めてしまえばもう躊躇うこともなかった。司からも積極的に口を開いて松岡を求めた。舌の温かさと滑らかさを感じるだけで体が反応する。早く衣服を取っ払いたくてうずうずした。察した松岡が司のTシャツを捲り上げ、一気に脱がされる。自分だけ肌を見せるのは不公平な気がして、「先輩も」と促したら、松岡は躊躇いなくシャツを脱ぎ捨てた。
松岡の身体を目の当たりにするのはいつぶりだろうか。同じ構造を持った肉体なのに、筋肉の有り方も肌も、全部自分とは違って見える。同性の身体にこんなに心を揺さぶられて欲情するのは松岡だけだ。早く触れたくて司から両腕を首に回して抱き付いた。直接肌が密着する。それだけで下半身が窮屈で仕方がなかった。
キスをしながら松岡の手が降りて、司のそこに触れる。下着の中に侵入し、恥ずかしいくらいに漲っているそれを柔らかく包まれた。思わず声が出てしまい、口をつぐむ。それを見た松岡はふっ、と微笑んだ。
「声、出していいよ」
「……でも自分ばっかり、いっぱいいっぱいで……」
「俺だっていっぱいいっぱいだよ。お前がちゃんと感じてるのを見たいし、聞きたいんだ」
今までにないほど司のものは濡れている。蜜を塗り広げられ、先端をくるくると親指で撫でられた。そして根本から先に向かって五本の指が滑る。
「んん……っ、あ、嫌……だ、すぐイキそう、だから」
自分だけこんなに早く達してしまうのは情けなくて恥ずかしい。すると、案外あっさり松岡が手を離したので、嫌だと言ったくせに物足りなく思った。
「イッて頭が冷えたら、また拒まれるかもしれないからね」
ここまで来て拒むはずがないのに、と思ったが、上手く言葉にできなかった。そのくらい呼吸も忙しなかった。司は足に絡まっているデニムと下着をすべて取り払った。何も身に着けていない自然体を、松岡の前に晒す。松岡は少し息を飲んだようだった。
「……どこをどう見ても、先輩と同じ男です。昔はまだ未熟なところもあったから、勢いとか興味とかで男の体でもそれなりに欲情できたかもしれない……。でも今はもう、完全に成熟しきった大人です。柔らかくもないし、今の状態から若返ることなんて絶対にないし。……それでも俺で……いいんですか」
松岡は返事の代わりに司の首や胸に唇を落とした。舌が正中を通って下腹部に辿り着く。やがて性器を口に含まれて、司は驚いて松岡の髪を掴んだ。
「ちょっ……」
松岡の舌使いに躊躇いがなかった。裏筋も双袋もくまなく舐められ、松岡の喉の奥まで取り込まれてしまった。粘膜の感触が心地よくて止めようにも止められない。
「あっ……せんぱ、い……っ、はぁ……っ」
もう駄目だ、というところでまたお預けをくらった。中途半端に止められて、そこに集中した血がドクドク波打って痛い。目に涙が溜まった。ひと息入れる間もなく、今度は後孔に指を進めてくる。久しぶりの感覚に戸惑い、つい力んでしまう。松岡の腕を掴んで爪を立ててしまった。耳元で囁かれる。
「大丈夫だから」
「でも」
「呼吸して。何も考えるな」
司は体に異物感を覚えたまま、言う通りにした。松岡の指の動きだけを感じて、それに合わせて息を吸ったり吐いたりした。徐々に奥まで進んでくる。感覚を思い出して体が慣れてきたころ、ようやく心地よさが追いついた。苦しげな息遣いが熱っぽくなるのを自分でも感じた。
ふと視線をずらして松岡の下半身を見る。司と同じく、早く先を望んでいるようだった。猛々しいながらも綺麗な形をした、そこですら理想的なフォルムに欲が出る。
「いれて……くださ、い……」
まさか自分から口にすることになるとは思わなかった。もう完全に堕ちたな、と思った瞬間に貫かれた。
「いっ……———あ……あぁ」
「……っ、痛くない?」
勿論、痛いに決まっている。けれどもそれ以上の快感と、言い様のない多幸感と絶望感に同時に襲われた。
「勢いと興味だけで男を抱けるわけないだろ。こんなに余裕がなくなるのも、お前にだけだよ」
深く体を繋げたまま、抱き締められて密着する。耳の横で切なげな声が言った。
「お前しか好きになれないんだよ、何回言ったら分かるんだよ」
気管支が締め付けられる。矢を刺されたように胸が痛い。この人は寂しがり屋なんだということを今、思い出した。そうすると今度は急に自分が彼を守ってやりたいような、そんな愛しさが込み上げた。
司は松岡の背中に腕を回して全身で彼を受け止めた。
松岡がゆっくり腰を揺らし始めた。様子を伺うように、体を気遣いながら抽挿を繰り返す。司が苦しそうにするといったん動きを止めて、キスをしたり性器を弄って気を紛らわせてくれる。
「んん……っ、せんぱ……、もっと動いて……くださ、い」
「……動いたら、止まれなくなる」
「いい、それでもいいから、……はやく、っ……」
膝裏を抱えられて、そこから一気に動きを早めた。松岡の額から汗が零れて、司の頬に落ちる。切羽詰まった表情と熱の籠った息切れが嬉しかった。いつも飄々とした松岡が本能を見せる、この無防備な姿が好きだと思った。
体を突かれながら前を扱かれた。そのうえ唇を塞がれては、至る所に彼を感じて気を失いそうだ。
「もう、……っ、いくよ……っ」
「あ、あっ……、はぃ……、ッ——あぁあ」
自分がいつ達したのか分からなかった。緩やかに快感が広がって、松岡の熱を体内で感じた途端、頭の中が真っ白になって力が抜けた。
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暑さと興奮で呼吸が荒い。息継ぎを許さないほど唇を押し付けられて、酸欠になりそうだ。下唇をついばむだけのものから、舌を絡めて口内を犯す深いものまで、夢中でキスをする。苦しさのあまり少しだけ俯くと、額に小さくキスされた。
「おいで」
手を引かれてようやくベッドに倒れ込んだ。松岡に覆われ、じっと見下ろされると落ち着かなくて視線を泳がせてしまう。ふと松岡の左手に光る指輪を見た。松岡は司のために指輪をしていると五十嵐は言っていたけれど、やはり自分の意思を無視してはめられたものにはいい気がしない。司の視線に気付いた松岡は、指輪を外した。
「もう必要ないよな」
指輪がカーペットの上にトン、と落ちる。
「目を合わせるのはまだ苦手なんだな」
背けられないよう、「こっちを見ろ」と頬に手を添えられる。一度目が合うと金縛りにあった。茶色の眼と視線が絡まり、そして距離が縮まったと思えばまた強くキスをされる。
腹を決めてしまえばもう躊躇うこともなかった。司からも積極的に口を開いて松岡を求めた。舌の温かさと滑らかさを感じるだけで体が反応する。早く衣服を取っ払いたくてうずうずした。察した松岡が司のTシャツを捲り上げ、一気に脱がされる。自分だけ肌を見せるのは不公平な気がして、「先輩も」と促したら、松岡は躊躇いなくシャツを脱ぎ捨てた。
松岡の身体を目の当たりにするのはいつぶりだろうか。同じ構造を持った肉体なのに、筋肉の有り方も肌も、全部自分とは違って見える。同性の身体にこんなに心を揺さぶられて欲情するのは松岡だけだ。早く触れたくて司から両腕を首に回して抱き付いた。直接肌が密着する。それだけで下半身が窮屈で仕方がなかった。
キスをしながら松岡の手が降りて、司のそこに触れる。下着の中に侵入し、恥ずかしいくらいに漲っているそれを柔らかく包まれた。思わず声が出てしまい、口をつぐむ。それを見た松岡はふっ、と微笑んだ。
「声、出していいよ」
「……でも自分ばっかり、いっぱいいっぱいで……」
「俺だっていっぱいいっぱいだよ。お前がちゃんと感じてるのを見たいし、聞きたいんだ」
今までにないほど司のものは濡れている。蜜を塗り広げられ、先端をくるくると親指で撫でられた。そして根本から先に向かって五本の指が滑る。
「んん……っ、あ、嫌……だ、すぐイキそう、だから」
自分だけこんなに早く達してしまうのは情けなくて恥ずかしい。すると、案外あっさり松岡が手を離したので、嫌だと言ったくせに物足りなく思った。
「イッて頭が冷えたら、また拒まれるかもしれないからね」
ここまで来て拒むはずがないのに、と思ったが、上手く言葉にできなかった。そのくらい呼吸も忙しなかった。司は足に絡まっているデニムと下着をすべて取り払った。何も身に着けていない自然体を、松岡の前に晒す。松岡は少し息を飲んだようだった。
「……どこをどう見ても、先輩と同じ男です。昔はまだ未熟なところもあったから、勢いとか興味とかで男の体でもそれなりに欲情できたかもしれない……。でも今はもう、完全に成熟しきった大人です。柔らかくもないし、今の状態から若返ることなんて絶対にないし。……それでも俺で……いいんですか」
松岡は返事の代わりに司の首や胸に唇を落とした。舌が正中を通って下腹部に辿り着く。やがて性器を口に含まれて、司は驚いて松岡の髪を掴んだ。
「ちょっ……」
松岡の舌使いに躊躇いがなかった。裏筋も双袋もくまなく舐められ、松岡の喉の奥まで取り込まれてしまった。粘膜の感触が心地よくて止めようにも止められない。
「あっ……せんぱ、い……っ、はぁ……っ」
もう駄目だ、というところでまたお預けをくらった。中途半端に止められて、そこに集中した血がドクドク波打って痛い。目に涙が溜まった。ひと息入れる間もなく、今度は後孔に指を進めてくる。久しぶりの感覚に戸惑い、つい力んでしまう。松岡の腕を掴んで爪を立ててしまった。耳元で囁かれる。
「大丈夫だから」
「でも」
「呼吸して。何も考えるな」
司は体に異物感を覚えたまま、言う通りにした。松岡の指の動きだけを感じて、それに合わせて息を吸ったり吐いたりした。徐々に奥まで進んでくる。感覚を思い出して体が慣れてきたころ、ようやく心地よさが追いついた。苦しげな息遣いが熱っぽくなるのを自分でも感じた。
ふと視線をずらして松岡の下半身を見る。司と同じく、早く先を望んでいるようだった。猛々しいながらも綺麗な形をした、そこですら理想的なフォルムに欲が出る。
「いれて……くださ、い……」
まさか自分から口にすることになるとは思わなかった。もう完全に堕ちたな、と思った瞬間に貫かれた。
「いっ……———あ……あぁ」
「……っ、痛くない?」
勿論、痛いに決まっている。けれどもそれ以上の快感と、言い様のない多幸感と絶望感に同時に襲われた。
「勢いと興味だけで男を抱けるわけないだろ。こんなに余裕がなくなるのも、お前にだけだよ」
深く体を繋げたまま、抱き締められて密着する。耳の横で切なげな声が言った。
「お前しか好きになれないんだよ、何回言ったら分かるんだよ」
気管支が締め付けられる。矢を刺されたように胸が痛い。この人は寂しがり屋なんだということを今、思い出した。そうすると今度は急に自分が彼を守ってやりたいような、そんな愛しさが込み上げた。
司は松岡の背中に腕を回して全身で彼を受け止めた。
松岡がゆっくり腰を揺らし始めた。様子を伺うように、体を気遣いながら抽挿を繰り返す。司が苦しそうにするといったん動きを止めて、キスをしたり性器を弄って気を紛らわせてくれる。
「んん……っ、せんぱ……、もっと動いて……くださ、い」
「……動いたら、止まれなくなる」
「いい、それでもいいから、……はやく、っ……」
膝裏を抱えられて、そこから一気に動きを早めた。松岡の額から汗が零れて、司の頬に落ちる。切羽詰まった表情と熱の籠った息切れが嬉しかった。いつも飄々とした松岡が本能を見せる、この無防備な姿が好きだと思った。
体を突かれながら前を扱かれた。そのうえ唇を塞がれては、至る所に彼を感じて気を失いそうだ。
「もう、……っ、いくよ……っ」
「あ、あっ……、はぃ……、ッ——あぁあ」
自分がいつ達したのか分からなかった。緩やかに快感が広がって、松岡の熱を体内で感じた途端、頭の中が真っ白になって力が抜けた。
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