GUILTY『菅野の過去2』 その夜
あと三十分もすれば定時になる。
このまま何も事件が入らなければ、予定通り五時過ぎには仕事を終えられるだろう。
――車で待ってろよ。――
菅野があんなことを言うもんだから、時間が経つにつれて頭の中も体もすっかりその気になっている。トイレでの出来事の続きを考えるだけで疼いてしまった。認めるのはやはり癪だが菅野とするのはいい。乱暴に扱く手とか、無遠慮に掻き回す指とか、噛み付いてくる口とか、俺がして欲しいと思うことを言わなくても勝手にしてくれる。
やたら体が熱いのも、なんとなく脈が早いような気がするのも、「菅野とするから」じゃない。「体の相性がいいセフレとするから」だ。菅野と同じような体格で同じようなことをしてくれるのなら、別に相手が菅野でなくてもいいのだ。手っ取り早く欲求不満を解消するための相手だ。だから早く会ってさっさと済ませたい。
自販機でコーヒーを買って刑事課へ戻る途中で菅野と出くわした。ポーカーフェイスに変わりはないが、やや急ぎ足なので用事でもできたのだろう。
「野田、いつも通りに終わるか」
「たぶん」
「ちょっと出て来るから多少遅れるけど、先に車ん中で待ってろ」
ポケットからいきなり車のキーを出して放り投げた。ジャラジャラと重い鍵の束には自宅の鍵も付いている。プライベートのことになると途端に無用心だ。
「別に今日でなくてもいいですよ」
「俺が今日がいんだよ」
と、言って、不愛想に通り過ぎた。「多少」とか言って何時間も待たされたらどうするんだ。鍵を受け取ってしまった以上、勝手に帰れない。まったくどこまでも自分勝手な野郎だ。
業務終了のチャイムが鳴った直後だった。騒がしい男女の声が刑事課に近付いてくる。誰もが振り返る激しい口論からして、ただの客人ではなさそうだ。
「てめェこのメスブタ! 訴えてやるからな!」
「なによ! ちょっと叩かれたくらいで大袈裟ね!」
「うるせーブス!! ぶっ殺す!」
「なんでアンタが逆切れするわけ!? ぶっ殺すはこっちの台詞よ!」
金髪丸刈りの男と、同じく金髪ロングヘアの化粧の濃い女だった。どちらも十代後半から二十代前半といったところか。二人を連れてきた大沢さんが困憊した顔つきで俺に近寄って来る。嫌な予感がした。
「野田」
「勘弁してください」
「頼む」
「なんすかアレ」
「署の前で、ずっとあんな調子で迷惑だからとりあえず連れて来た。カップルの痴話喧嘩だ」
「めんどくさ。勿論、大沢さんが処理するんですよね」
すると、大沢さんが顔の前で両手を擦り合わせて懇願してきた。
「野田! 任せた! 俺は今から別件が!」
「俺だって今日は早く帰りますよ!」
「ちょっと話聞いて鎮めてやるだけでいいから!」
「もー……」
俺は大きく息を吐いて、陰でこそこそ見て見ぬふりをしている島村をとっ捕まえた。
「ひ!」
「おい、お前も手伝うんだよ、新人刑事」
いまだ「被害届出させろや!」と荒ぶっている男の傍に寄り、「まあまあ」と声を掛けると、眉毛のない般若のような顔でキッと見下ろされた。標準より身長が低いのが密かなコンプレックスの俺は、見下ろされるとムッとして、つい睨み返すのが癖だ。男は反抗的な表情のまま口をつぐんだ。
「とりあえず話聞こうか。島村は彼女の話聞いてやって」
「はい」
「なんだよ、取調べってやつかよ! 被害者は俺だぞ!」
「ただ経緯聞かせてもらうだけだから。どっちの話も聞かないとね」
ぶつくさと文句を垂れる男の腕を引っ張って取調室に入った。正直言って面倒臭い。ただの痴話喧嘩を署の前でするなと言いたいが、とりあえず我慢だ。取調室に入ると男はえらくふてぶてしい態度でパイプ椅子に座った。
「えー、名前と住所は?」
「それ言わなきゃいけねぇのかよ」
「別にパクるわけじゃないから心配すんな」
「大山淳二、一本松町」
「何があったの?」
「ったく、めんどくせーな。俺が他の女とちょっと遊んでただけで、いきなりキレやがったんだよ。んで、クソ重てぇ鞄でぶん殴ってきやがった。モロ鼻に当たって鼻血まで出たんだぜ」
「出てねぇじゃねーか」
「今は止まってるけど、出たんだよ!」
ダン! と机を叩く。聞けば聞くほど下らなそうだ。
「なー、被害届け出せねーの? ショーガイザイ? ボーコーザイ?」
「傷害罪は医者の診断書が必要だ。見る限り目立つ怪我はしてないし、暴行罪は暴行罪で証拠がないから受理されるかどうか分かんねーな。今回はただの喧嘩ってことでゴメンナサイして終わるのが一番なんじゃないの」
「くっそムカつく」
男は不服そうに眉を寄せて舌打ちをした。
「遊んでたってどういうことよ。他の子とデートかなんかしてたわけ? さっきの子、お前の彼女だろ?」
「シラネ。付き合ってるとか思ってんのアイツだけだよ。俺は別に好きでもなんでもないし、セフレだよ、セフレ。だから俺が誰と何しようがアイツにごちゃごちゃ言われる筋合いはねぇっての。勝手にライン見て裏切っただの最低だのほざいてんだ。ウゼーしキメーし」
「じゃあ、その遊んでたって子が本命?」
「いんや、どっちも遊び。決まった誰かと付き合うとかしんどくね? その時ヤリたい相手とヤるのが最高だよ」
声のトーンが下がったので少し落ち着いたようではあるが、投げやりな喋り方からしてまだ怒りが治まっていないようだ。
「じゃあ、さっきの子か、その子がもうお前とはヤラねぇって言ったらどうすんの」
「勝手にすれば。あいつらがどこ行ったって関係ねぇし。便利だから連絡取ってるだけで。……あー鼻ん中いてぇ。ムカつくわ、あの女。死ねクソ」
そして俺は目の前にある机を思い切り蹴り倒した。男は驚いて飛び上がり、「危ねぇだろ!!」と声を上げる。
「あ、ごめん、足が滑った」
「んなわけねぇだろ!」
「いや、あの彼女の気持ちになってみたら、足が滑って蹴っちゃった」
「わざとじゃねぇか!」
「よくよく考えてみたら碌でもねぇなと思って。やたらめったら手ェ出して、公の場で罵声浴びせて被害者面して『僕は悪くありません』ってか。だったら、おめー想像してみろよ。さっきの子がお前との関係を苦に自殺でもしたらどうする。運悪く事故に遭って突然死んだり殺されたらどうするよ。それでもなんとも思わねぇってか」
「んなことで自殺なんかするかよ!」
「そんなの分かんねーぞ。それにお前、自分が同じことされたらどうなんだよ。自分が好きだと思ってる子に『ただのセフレだしウゼーしキメーし』って警察に被害届け出されたら? 『相手の気持ちを考えなさい』って小学校の道徳で習うだろうよ」
「ドートクとか下らね」
「道徳失くしたのか。そりゃ大変だ。ブタ箱で反省するか」
「なんで俺が!」
「若いうちはそうやって遊んるだけで充分だろうけどな、あんま粗末にしてると後悔するぜ。案外、身近なとこで人間ってすぐ死ぬんだ。なんも考えないで死ねとかぶっ殺すとか言ってるけど、本当に死んでるの見たら後味悪いし、悲惨なんだからな。あ、死体見たことある?」
「……ねーよ」
「人って死んだら大体数日で腐るんだけどよ、体内で腐敗ガスが溜まって体が膨張すんだ。皮膚の色も青紫みたいに変わるし、目ん玉飛び出るし、」
「聞いてねぇだろ、やめろ」
「皮膚が破けたらもう惨事。くっせーのなんの」
「うっせーな! やめろ!!」
「……ってことになってからじゃ、遅いんだ。お前がどういう人付き合いしようが俺には関係ないけどさ、大事にしてやれない人間関係なら縁を切ったほうがマシだ。ちょっと頭冷やして考えな」
俺は自分で蹴り飛ばした机を元に戻し、ちょうどドアを開けると島村が立っていたので後は任せることにした。
六時を過ぎている。おそらく菅野はまだ戻っていないだろう。署を出て数メートル離れたパーキングに停めてある菅野の車を目指した。薄暗くなったパーキングにポツンと残された黒のハリアー。数メートル離れたところからロックを解いて助手席のドアに手を伸ばした時、突然背後から首を掴まれて後部座席へ押し込まれた。あまりに強引で手荒なので、ついに自分が事件に巻き込まれたかと思ったほどだ。奥へ追いやられ、続いて図体のでかいひとりの男が一緒に乗り込む。菅野だった。
「もっとまともなやり方があるでしょう!」
「遅すぎる。人の鍵持っといて何やってた」
「鍵を渡したのは菅野さんでしょう。帰り際にちょっとした厄介ごと押し付けられただけです」
「誰に」
「大沢さんに」
「懲らしめねぇとな」
「大沢さんを?」
「野田をだよ」
「なんでですかっ……」
唐突に唇を塞がれる。いきなり大口で覆われて舌をねじ込み、逃れられないように喉の奥まで押し込まれた。窓にゴン、と後頭部をぶつけようがおかまいなしだ。少しだけ顔を離して菅野が言う。
「上司を待たせやがって、仕置きしねぇとな。で、何を押し付けられたんだ」
「俺だって遊んでたわけじゃ……、う……」
ワイシャツの上から胸を撫でられながら、そのまま話を続ける。
「署の前でカップルが痴話喧嘩してて、うるさくて迷惑だからって……、大沢さんが、連れてきて……、っ……」
立ち上がった先端に爪を引っ掻けられた。
「で?」
「ちょっと話聞いて鎮めてやってくれって……」
「どんなカップルだよ」
「なんか……やさぐれた若い男女……まあ、すんげー下らない……なんで俺が……」
「しょせん、所轄刑事だからな。ちっせー厄介ごとをちまちま片付け続けるのが、平和に繋がるんだ」
「……らしくない……ってか、ちょ、やめて下さいよ、さっきから」
ワイシャツの裾を持ち上げられ、中に菅野の手が滑り込む。冷たい手に身震いした。
「外で待たされてたから手が冷えてんだよ、我慢しろ。つーか、これ邪魔だな。脱げ」
「こんなとこでヤルんすか!」
「とりあえず、いったんヤラせろ」
「猿ですか。バレますよ」
「うるせー口だな。黙ってろ」
シートに押し倒されて、深いキスをする。上顎から下顎まで舌が這い、歯も唇も舌も、くまなく吸われた。唾液を零しながら欲しがる様は、もう腹を空かせた猛獣だ。両胸を指で弄られ、押し潰されては弾かれる。それでもキスは終わらない。
「ん……、ふっ、ぁ……っ」
ギュッとつままれてグリグリねじられると、ダイレクトに下半身まで電気が走る。あっという間に火が点いてしまい、それに気付いた菅野はようやく唇を離してニタニタと笑みを浮かべた。
「もう取り返しつかねぇな?」
「最低だ……」
「アッサリおっ勃ててんの誰だよ」
服の上から握られて、思わず「あっ」と声を上げた。色気も情緒もなく下着ごとずらされ、すぐに咥えられる。根本まで含まれると唾液で濡らされた。ゆっくり先に向かって吸い上げる。ヘンタイ、サイテーと罵りながらも、俺の下半身はその先を期待していた。
「あっ……、も、ぅ……」
「なんだ、もう出したいのか」
「ちが……なんでもない……」
そしてまた口淫が続いた。わざとなのか、やたらゆっくりした動作でスライドさせている。
――もどかしい。
こんなことしてるの外から誰かに見られたらどうすんだ。
焦る、……気持ちいい、早く終われ、……でも惜しい……。
「んっぁ、か、菅野さ、……それ、わざとですか」
「何がだよ」
「ゆっくりすんの……」
「いつも通りだろうが」
「いや、ちょ、頼むから」
「上司に向かって『頼むから』は、ねぇだろ」
「ほんと、あの」
「はっきり言え」
「……も、……う、もっと早く動かして下さいよッ!!」
「言えるじゃねーか」
今度は口ではなく、手で強めにシゴかれた。絡み付く水音。吸い付かれる胸。
「あっ、あっ、気持ち、いい……っ、出そ……」
達する直前で菅野が咥えたので、菅野の口の中に出してしまう羽目になった。最後の一滴まで吸い上げられる。菅野はそれを手の平に出すと俺の片膝を持ち上げ、露わになった後孔に塗りたくった。
「ちょっ……マジで最後までヤルんですかっ、あぁっ」
指が体内に侵入する。
「自分だけ気持ちよくなろうってのはズルいだろ。俺ぁ、昼間からずっと我慢してんだ。見ろよ、こんなもん提げたまま外歩けねぇっての」
いつの間にか出していた菅野のそれは、いつでも突入可能な状態だ。思わず生唾を飲む。
「下向け。んで、尻出せ」
相変わらずの命令口調にイラッとしながらも言う通りにしてしまう。そして指を抜くとすぐにそれを俺の後ろに宛がった。息を大きく吸って止めた瞬間、突き刺された。
「―――ぅあぁ……」
サイドガラスをバンッと叩く。夜になって冷えてきたからか、やや曇っていたガラスには俺の手形がくっきりと入った。
「くそ、狭ぇな……、おい、一気にいくからな」
言葉通り、菅野はいきなり激しく腰を振った。充分な潤いもないので痛みはあるが、やはり弱点を突かれては反応せずにはいられない。
「は、あっ……! かん、の、さ……っ、もっと……」
「ここだろ」
「あぁあっ、もっとして……っ!」
ギシギシとシートが音を立てる。車は激しく揺れているだろう。もしこの車の横を誰かが通ったとしたら、中で何が起こっているか分からない人間はいないはずだ。
――どうしよう、誰かに見られたら。
ああ、でもやめて欲しくない。
背中の上から菅野の息遣いが聞こえる。切羽詰まったような、軽い息切れ。俺の中で最大に膨らんで熱くなっているものを考えれば、こいつだって限界が近いはずだ。菅野は腰の動きを緩めず、そのまま後ろから俺の胸と下半身を荒く弄った。手つきは雑なのに、性感帯は心得ていて、治まりかけていた下半身はすぐにまた立ち上がった。突かれるより速いスピードでシゴかれて、上下前後からの刺激に脳みそがイカれそうだ。
「んんぁ、あ、あぁっ、腰がっ、砕ける……っ」
溢れる先走りで滑りが良くなり、それが更に興奮を呼ぶ。いよいよ昇りつめた時だった。菅野は俺の背中に密着して肩を噛む。そして耳元で「いくぞ」と囁かれて、俺はうんうんと首を縦に振った。膨れきった俺のものを握っている手に力が籠もり、同時に引き抜かれたと思ったら、ズン、と最奥を突かれた。体の中に熱が広がる。どくどく伝わる鼓動。ほぼ同時に達した俺自身も菅野の手の中で脈を打っている。
菅野に押し潰されるようにしてシートに横たわった。うなじを舐めてくる。
「あー、やっとちょっと落ち着いたな」
「……これを犯罪っていうんだと思うんですけど……」
「よく言うぜ、悦んでるくせによ」
欲を果たされて体は鎮まったが、心臓の鼓動だけが中々治まらない。いまだ菅野が被さっていることが落ち着かない。
昇天したあとに訪れる虚無感。フラストレーションを解消するためだけの行為。そこに特別な感情なんてない。しかも今日はそれに加えて罪悪感も伴った。なぜなら、ここに来る直前、「大事にしてやれない人間関係なら縁を切ったほうがマシだ」とえらそうに言ったばかりだからだ。
人を大事にできてないのは誰のことだか。
禄でもないのは誰のことだか。
少なくとも俺はあの男に説教なんてできる立場じゃない。自分で言っておいて反吐が出るほど矛盾している。こんな自分が本当は嫌だ。だけど考えたくないし、答えが出るのが怖い気もする。
そんな俺の複雑な想いなんて露知らずの菅野が呑気に言った。
「狭くて体が痛ぇな。場所変えるか」
「……まだするんですか」
***
翌日、昼休憩に入ると同時に刑事課に来客があった。俺に用があると言って訪れたその客人は、昨日の金髪の男だった。どこか反抗的な印象は変わらないが、昨日よりは随分おとなしい様子で「どうも」と頭を下げた。
「おう、どうした」
「いや……なんとなく、言っとこうかなと思って」
「何を?」
「あー、アンタ、昨日色々言ってたじゃん」
「ああ」
「あのあと、アイツのほうから離れてったわ」
無神経だと自覚はあるが、つい噴き出してしまった。男はあからさまに眉を寄せる。
「悪い」
「だから、まあ……俺も今度はちゃんとしようかなと思って」
「ちゃんとって?」
「いちいち言わせんな!」
「ようは改心したってことだよな。たった半日でオマエ偉いな」
「嬉しくねーし」
「素直じゃないの」
「そんだけ」
ふてぶてしく背を向けたその男の背中に、俺は何を思ってか問いかけた。
「お前、警察官に興味ないの?」
振り返った男は幾分驚いた顔つきだった。そして考える間もなく「ねぇよ」と即答する。
「ザンネン」
最後に少しだけ不器用に微笑した男は、速足で去った。
事件でもなんでもない、ただの面倒ごとだったけど、ああやって少しでも改心してくれる人間を目の当たりにするのはやはり悪い気はしない。田舎の所轄刑事もそれなりに役に立つということだ。
いつの間に背後にいたのか、「あれが昨日言ってた奴か」と仁王立ちの菅野が言う。
「いきなり現れるのやめて下さい」
「用があるんだよ。お前、今日の帰り付き合え」
「また!?」
「違う。車の掃除手伝え。ザーメンくせぇのなんのって」
「なんで俺が」
「てめーがぶっ放したんだろうが」
「俺だけじゃないでしょ」
「俺はてめーん中に出したんだ」
まったくもって決まりが悪い。誤魔化すように頭をかきながら渋々了承した。そして菅野は何食わぬ顔で仕事に戻るのである。
菅野といると腹が立つ。だけど体の要求には抗えない。やっぱり俺は人の恋愛観にどうこう言える人間じゃないのだ。でも、もしこの関係を菅野以外の奴と持つとしたら? 例えば島村とか、大沢さんとか。……違うな。体の相性が良ければ誰でもいいと思ったけれど、冷静に考えるとそこまで器用でもないようだ。それだけでもまだマシか。とりあえず今はこのままでいい、と思うことにする。いつかあの虚無感の正体が分かるだろう。
「野田さーん、八百屋で窃盗ですよー」
そして今日も所轄刑事の仕事をまっとうする。
END
このまま何も事件が入らなければ、予定通り五時過ぎには仕事を終えられるだろう。
――車で待ってろよ。――
菅野があんなことを言うもんだから、時間が経つにつれて頭の中も体もすっかりその気になっている。トイレでの出来事の続きを考えるだけで疼いてしまった。認めるのはやはり癪だが菅野とするのはいい。乱暴に扱く手とか、無遠慮に掻き回す指とか、噛み付いてくる口とか、俺がして欲しいと思うことを言わなくても勝手にしてくれる。
やたら体が熱いのも、なんとなく脈が早いような気がするのも、「菅野とするから」じゃない。「体の相性がいいセフレとするから」だ。菅野と同じような体格で同じようなことをしてくれるのなら、別に相手が菅野でなくてもいいのだ。手っ取り早く欲求不満を解消するための相手だ。だから早く会ってさっさと済ませたい。
自販機でコーヒーを買って刑事課へ戻る途中で菅野と出くわした。ポーカーフェイスに変わりはないが、やや急ぎ足なので用事でもできたのだろう。
「野田、いつも通りに終わるか」
「たぶん」
「ちょっと出て来るから多少遅れるけど、先に車ん中で待ってろ」
ポケットからいきなり車のキーを出して放り投げた。ジャラジャラと重い鍵の束には自宅の鍵も付いている。プライベートのことになると途端に無用心だ。
「別に今日でなくてもいいですよ」
「俺が今日がいんだよ」
と、言って、不愛想に通り過ぎた。「多少」とか言って何時間も待たされたらどうするんだ。鍵を受け取ってしまった以上、勝手に帰れない。まったくどこまでも自分勝手な野郎だ。
業務終了のチャイムが鳴った直後だった。騒がしい男女の声が刑事課に近付いてくる。誰もが振り返る激しい口論からして、ただの客人ではなさそうだ。
「てめェこのメスブタ! 訴えてやるからな!」
「なによ! ちょっと叩かれたくらいで大袈裟ね!」
「うるせーブス!! ぶっ殺す!」
「なんでアンタが逆切れするわけ!? ぶっ殺すはこっちの台詞よ!」
金髪丸刈りの男と、同じく金髪ロングヘアの化粧の濃い女だった。どちらも十代後半から二十代前半といったところか。二人を連れてきた大沢さんが困憊した顔つきで俺に近寄って来る。嫌な予感がした。
「野田」
「勘弁してください」
「頼む」
「なんすかアレ」
「署の前で、ずっとあんな調子で迷惑だからとりあえず連れて来た。カップルの痴話喧嘩だ」
「めんどくさ。勿論、大沢さんが処理するんですよね」
すると、大沢さんが顔の前で両手を擦り合わせて懇願してきた。
「野田! 任せた! 俺は今から別件が!」
「俺だって今日は早く帰りますよ!」
「ちょっと話聞いて鎮めてやるだけでいいから!」
「もー……」
俺は大きく息を吐いて、陰でこそこそ見て見ぬふりをしている島村をとっ捕まえた。
「ひ!」
「おい、お前も手伝うんだよ、新人刑事」
いまだ「被害届出させろや!」と荒ぶっている男の傍に寄り、「まあまあ」と声を掛けると、眉毛のない般若のような顔でキッと見下ろされた。標準より身長が低いのが密かなコンプレックスの俺は、見下ろされるとムッとして、つい睨み返すのが癖だ。男は反抗的な表情のまま口をつぐんだ。
「とりあえず話聞こうか。島村は彼女の話聞いてやって」
「はい」
「なんだよ、取調べってやつかよ! 被害者は俺だぞ!」
「ただ経緯聞かせてもらうだけだから。どっちの話も聞かないとね」
ぶつくさと文句を垂れる男の腕を引っ張って取調室に入った。正直言って面倒臭い。ただの痴話喧嘩を署の前でするなと言いたいが、とりあえず我慢だ。取調室に入ると男はえらくふてぶてしい態度でパイプ椅子に座った。
「えー、名前と住所は?」
「それ言わなきゃいけねぇのかよ」
「別にパクるわけじゃないから心配すんな」
「大山淳二、一本松町」
「何があったの?」
「ったく、めんどくせーな。俺が他の女とちょっと遊んでただけで、いきなりキレやがったんだよ。んで、クソ重てぇ鞄でぶん殴ってきやがった。モロ鼻に当たって鼻血まで出たんだぜ」
「出てねぇじゃねーか」
「今は止まってるけど、出たんだよ!」
ダン! と机を叩く。聞けば聞くほど下らなそうだ。
「なー、被害届け出せねーの? ショーガイザイ? ボーコーザイ?」
「傷害罪は医者の診断書が必要だ。見る限り目立つ怪我はしてないし、暴行罪は暴行罪で証拠がないから受理されるかどうか分かんねーな。今回はただの喧嘩ってことでゴメンナサイして終わるのが一番なんじゃないの」
「くっそムカつく」
男は不服そうに眉を寄せて舌打ちをした。
「遊んでたってどういうことよ。他の子とデートかなんかしてたわけ? さっきの子、お前の彼女だろ?」
「シラネ。付き合ってるとか思ってんのアイツだけだよ。俺は別に好きでもなんでもないし、セフレだよ、セフレ。だから俺が誰と何しようがアイツにごちゃごちゃ言われる筋合いはねぇっての。勝手にライン見て裏切っただの最低だのほざいてんだ。ウゼーしキメーし」
「じゃあ、その遊んでたって子が本命?」
「いんや、どっちも遊び。決まった誰かと付き合うとかしんどくね? その時ヤリたい相手とヤるのが最高だよ」
声のトーンが下がったので少し落ち着いたようではあるが、投げやりな喋り方からしてまだ怒りが治まっていないようだ。
「じゃあ、さっきの子か、その子がもうお前とはヤラねぇって言ったらどうすんの」
「勝手にすれば。あいつらがどこ行ったって関係ねぇし。便利だから連絡取ってるだけで。……あー鼻ん中いてぇ。ムカつくわ、あの女。死ねクソ」
そして俺は目の前にある机を思い切り蹴り倒した。男は驚いて飛び上がり、「危ねぇだろ!!」と声を上げる。
「あ、ごめん、足が滑った」
「んなわけねぇだろ!」
「いや、あの彼女の気持ちになってみたら、足が滑って蹴っちゃった」
「わざとじゃねぇか!」
「よくよく考えてみたら碌でもねぇなと思って。やたらめったら手ェ出して、公の場で罵声浴びせて被害者面して『僕は悪くありません』ってか。だったら、おめー想像してみろよ。さっきの子がお前との関係を苦に自殺でもしたらどうする。運悪く事故に遭って突然死んだり殺されたらどうするよ。それでもなんとも思わねぇってか」
「んなことで自殺なんかするかよ!」
「そんなの分かんねーぞ。それにお前、自分が同じことされたらどうなんだよ。自分が好きだと思ってる子に『ただのセフレだしウゼーしキメーし』って警察に被害届け出されたら? 『相手の気持ちを考えなさい』って小学校の道徳で習うだろうよ」
「ドートクとか下らね」
「道徳失くしたのか。そりゃ大変だ。ブタ箱で反省するか」
「なんで俺が!」
「若いうちはそうやって遊んるだけで充分だろうけどな、あんま粗末にしてると後悔するぜ。案外、身近なとこで人間ってすぐ死ぬんだ。なんも考えないで死ねとかぶっ殺すとか言ってるけど、本当に死んでるの見たら後味悪いし、悲惨なんだからな。あ、死体見たことある?」
「……ねーよ」
「人って死んだら大体数日で腐るんだけどよ、体内で腐敗ガスが溜まって体が膨張すんだ。皮膚の色も青紫みたいに変わるし、目ん玉飛び出るし、」
「聞いてねぇだろ、やめろ」
「皮膚が破けたらもう惨事。くっせーのなんの」
「うっせーな! やめろ!!」
「……ってことになってからじゃ、遅いんだ。お前がどういう人付き合いしようが俺には関係ないけどさ、大事にしてやれない人間関係なら縁を切ったほうがマシだ。ちょっと頭冷やして考えな」
俺は自分で蹴り飛ばした机を元に戻し、ちょうどドアを開けると島村が立っていたので後は任せることにした。
六時を過ぎている。おそらく菅野はまだ戻っていないだろう。署を出て数メートル離れたパーキングに停めてある菅野の車を目指した。薄暗くなったパーキングにポツンと残された黒のハリアー。数メートル離れたところからロックを解いて助手席のドアに手を伸ばした時、突然背後から首を掴まれて後部座席へ押し込まれた。あまりに強引で手荒なので、ついに自分が事件に巻き込まれたかと思ったほどだ。奥へ追いやられ、続いて図体のでかいひとりの男が一緒に乗り込む。菅野だった。
「もっとまともなやり方があるでしょう!」
「遅すぎる。人の鍵持っといて何やってた」
「鍵を渡したのは菅野さんでしょう。帰り際にちょっとした厄介ごと押し付けられただけです」
「誰に」
「大沢さんに」
「懲らしめねぇとな」
「大沢さんを?」
「野田をだよ」
「なんでですかっ……」
唐突に唇を塞がれる。いきなり大口で覆われて舌をねじ込み、逃れられないように喉の奥まで押し込まれた。窓にゴン、と後頭部をぶつけようがおかまいなしだ。少しだけ顔を離して菅野が言う。
「上司を待たせやがって、仕置きしねぇとな。で、何を押し付けられたんだ」
「俺だって遊んでたわけじゃ……、う……」
ワイシャツの上から胸を撫でられながら、そのまま話を続ける。
「署の前でカップルが痴話喧嘩してて、うるさくて迷惑だからって……、大沢さんが、連れてきて……、っ……」
立ち上がった先端に爪を引っ掻けられた。
「で?」
「ちょっと話聞いて鎮めてやってくれって……」
「どんなカップルだよ」
「なんか……やさぐれた若い男女……まあ、すんげー下らない……なんで俺が……」
「しょせん、所轄刑事だからな。ちっせー厄介ごとをちまちま片付け続けるのが、平和に繋がるんだ」
「……らしくない……ってか、ちょ、やめて下さいよ、さっきから」
ワイシャツの裾を持ち上げられ、中に菅野の手が滑り込む。冷たい手に身震いした。
「外で待たされてたから手が冷えてんだよ、我慢しろ。つーか、これ邪魔だな。脱げ」
「こんなとこでヤルんすか!」
「とりあえず、いったんヤラせろ」
「猿ですか。バレますよ」
「うるせー口だな。黙ってろ」
シートに押し倒されて、深いキスをする。上顎から下顎まで舌が這い、歯も唇も舌も、くまなく吸われた。唾液を零しながら欲しがる様は、もう腹を空かせた猛獣だ。両胸を指で弄られ、押し潰されては弾かれる。それでもキスは終わらない。
「ん……、ふっ、ぁ……っ」
ギュッとつままれてグリグリねじられると、ダイレクトに下半身まで電気が走る。あっという間に火が点いてしまい、それに気付いた菅野はようやく唇を離してニタニタと笑みを浮かべた。
「もう取り返しつかねぇな?」
「最低だ……」
「アッサリおっ勃ててんの誰だよ」
服の上から握られて、思わず「あっ」と声を上げた。色気も情緒もなく下着ごとずらされ、すぐに咥えられる。根本まで含まれると唾液で濡らされた。ゆっくり先に向かって吸い上げる。ヘンタイ、サイテーと罵りながらも、俺の下半身はその先を期待していた。
「あっ……、も、ぅ……」
「なんだ、もう出したいのか」
「ちが……なんでもない……」
そしてまた口淫が続いた。わざとなのか、やたらゆっくりした動作でスライドさせている。
――もどかしい。
こんなことしてるの外から誰かに見られたらどうすんだ。
焦る、……気持ちいい、早く終われ、……でも惜しい……。
「んっぁ、か、菅野さ、……それ、わざとですか」
「何がだよ」
「ゆっくりすんの……」
「いつも通りだろうが」
「いや、ちょ、頼むから」
「上司に向かって『頼むから』は、ねぇだろ」
「ほんと、あの」
「はっきり言え」
「……も、……う、もっと早く動かして下さいよッ!!」
「言えるじゃねーか」
今度は口ではなく、手で強めにシゴかれた。絡み付く水音。吸い付かれる胸。
「あっ、あっ、気持ち、いい……っ、出そ……」
達する直前で菅野が咥えたので、菅野の口の中に出してしまう羽目になった。最後の一滴まで吸い上げられる。菅野はそれを手の平に出すと俺の片膝を持ち上げ、露わになった後孔に塗りたくった。
「ちょっ……マジで最後までヤルんですかっ、あぁっ」
指が体内に侵入する。
「自分だけ気持ちよくなろうってのはズルいだろ。俺ぁ、昼間からずっと我慢してんだ。見ろよ、こんなもん提げたまま外歩けねぇっての」
いつの間にか出していた菅野のそれは、いつでも突入可能な状態だ。思わず生唾を飲む。
「下向け。んで、尻出せ」
相変わらずの命令口調にイラッとしながらも言う通りにしてしまう。そして指を抜くとすぐにそれを俺の後ろに宛がった。息を大きく吸って止めた瞬間、突き刺された。
「―――ぅあぁ……」
サイドガラスをバンッと叩く。夜になって冷えてきたからか、やや曇っていたガラスには俺の手形がくっきりと入った。
「くそ、狭ぇな……、おい、一気にいくからな」
言葉通り、菅野はいきなり激しく腰を振った。充分な潤いもないので痛みはあるが、やはり弱点を突かれては反応せずにはいられない。
「は、あっ……! かん、の、さ……っ、もっと……」
「ここだろ」
「あぁあっ、もっとして……っ!」
ギシギシとシートが音を立てる。車は激しく揺れているだろう。もしこの車の横を誰かが通ったとしたら、中で何が起こっているか分からない人間はいないはずだ。
――どうしよう、誰かに見られたら。
ああ、でもやめて欲しくない。
背中の上から菅野の息遣いが聞こえる。切羽詰まったような、軽い息切れ。俺の中で最大に膨らんで熱くなっているものを考えれば、こいつだって限界が近いはずだ。菅野は腰の動きを緩めず、そのまま後ろから俺の胸と下半身を荒く弄った。手つきは雑なのに、性感帯は心得ていて、治まりかけていた下半身はすぐにまた立ち上がった。突かれるより速いスピードでシゴかれて、上下前後からの刺激に脳みそがイカれそうだ。
「んんぁ、あ、あぁっ、腰がっ、砕ける……っ」
溢れる先走りで滑りが良くなり、それが更に興奮を呼ぶ。いよいよ昇りつめた時だった。菅野は俺の背中に密着して肩を噛む。そして耳元で「いくぞ」と囁かれて、俺はうんうんと首を縦に振った。膨れきった俺のものを握っている手に力が籠もり、同時に引き抜かれたと思ったら、ズン、と最奥を突かれた。体の中に熱が広がる。どくどく伝わる鼓動。ほぼ同時に達した俺自身も菅野の手の中で脈を打っている。
菅野に押し潰されるようにしてシートに横たわった。うなじを舐めてくる。
「あー、やっとちょっと落ち着いたな」
「……これを犯罪っていうんだと思うんですけど……」
「よく言うぜ、悦んでるくせによ」
欲を果たされて体は鎮まったが、心臓の鼓動だけが中々治まらない。いまだ菅野が被さっていることが落ち着かない。
昇天したあとに訪れる虚無感。フラストレーションを解消するためだけの行為。そこに特別な感情なんてない。しかも今日はそれに加えて罪悪感も伴った。なぜなら、ここに来る直前、「大事にしてやれない人間関係なら縁を切ったほうがマシだ」とえらそうに言ったばかりだからだ。
人を大事にできてないのは誰のことだか。
禄でもないのは誰のことだか。
少なくとも俺はあの男に説教なんてできる立場じゃない。自分で言っておいて反吐が出るほど矛盾している。こんな自分が本当は嫌だ。だけど考えたくないし、答えが出るのが怖い気もする。
そんな俺の複雑な想いなんて露知らずの菅野が呑気に言った。
「狭くて体が痛ぇな。場所変えるか」
「……まだするんですか」
***
翌日、昼休憩に入ると同時に刑事課に来客があった。俺に用があると言って訪れたその客人は、昨日の金髪の男だった。どこか反抗的な印象は変わらないが、昨日よりは随分おとなしい様子で「どうも」と頭を下げた。
「おう、どうした」
「いや……なんとなく、言っとこうかなと思って」
「何を?」
「あー、アンタ、昨日色々言ってたじゃん」
「ああ」
「あのあと、アイツのほうから離れてったわ」
無神経だと自覚はあるが、つい噴き出してしまった。男はあからさまに眉を寄せる。
「悪い」
「だから、まあ……俺も今度はちゃんとしようかなと思って」
「ちゃんとって?」
「いちいち言わせんな!」
「ようは改心したってことだよな。たった半日でオマエ偉いな」
「嬉しくねーし」
「素直じゃないの」
「そんだけ」
ふてぶてしく背を向けたその男の背中に、俺は何を思ってか問いかけた。
「お前、警察官に興味ないの?」
振り返った男は幾分驚いた顔つきだった。そして考える間もなく「ねぇよ」と即答する。
「ザンネン」
最後に少しだけ不器用に微笑した男は、速足で去った。
事件でもなんでもない、ただの面倒ごとだったけど、ああやって少しでも改心してくれる人間を目の当たりにするのはやはり悪い気はしない。田舎の所轄刑事もそれなりに役に立つということだ。
いつの間に背後にいたのか、「あれが昨日言ってた奴か」と仁王立ちの菅野が言う。
「いきなり現れるのやめて下さい」
「用があるんだよ。お前、今日の帰り付き合え」
「また!?」
「違う。車の掃除手伝え。ザーメンくせぇのなんのって」
「なんで俺が」
「てめーがぶっ放したんだろうが」
「俺だけじゃないでしょ」
「俺はてめーん中に出したんだ」
まったくもって決まりが悪い。誤魔化すように頭をかきながら渋々了承した。そして菅野は何食わぬ顔で仕事に戻るのである。
菅野といると腹が立つ。だけど体の要求には抗えない。やっぱり俺は人の恋愛観にどうこう言える人間じゃないのだ。でも、もしこの関係を菅野以外の奴と持つとしたら? 例えば島村とか、大沢さんとか。……違うな。体の相性が良ければ誰でもいいと思ったけれど、冷静に考えるとそこまで器用でもないようだ。それだけでもまだマシか。とりあえず今はこのままでいい、と思うことにする。いつかあの虚無感の正体が分かるだろう。
「野田さーん、八百屋で窃盗ですよー」
そして今日も所轄刑事の仕事をまっとうする。
END
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