桜並木2【R】
「以前、怪我をして熱を出した僕の看病をして下さって本当にありがとうございました。お礼を言うのが遅くなって申し訳ありません。それから、あの日、絶対待っていろと言われたのに、黙っていなくなってごめんなさい。堤先生を拒んだわけじゃないんですけど、そういう風に捉えられても仕方ない、ですよね」
「……」
「圭介と話がつかないまま、堤先生と一緒にいるわけにいかないと思ったんです。もっと早く連絡できれば良かったんですけど、僕の気持ちの整理がなかなかつかなかったものですから……」
微動だにしない雅久の後姿に不安を覚えたのか、達也は「怒ってますか?」と機嫌を窺った。雅久はあえて返事をしなかった。
「そうですよね、僕はいつも自分勝手だから……。本当にごめんなさい。でも、これだけどうしても伝えたかったんです。それを言ったら帰ります」
雅久は少しだけ首を動かす。
「僕は堤先生が好きです。先生はもう僕のことは嫌いになったかもしれないけど、先生を想わない日はありませんでした」
思わざる告白に、不本意であるはずがない。唐突すぎて硬直しているだけだ。達也に背を向けたまま、目を泳がせて静かに驚いていた。雅久のあまりの反応の薄さに、達也は諦めたようで、消え入りそうな声で「それだけです」と残した。ガラスに映った達也が踵を返すと雅久はようやく動いて、去ろうとする達也の背中を抱き締める。細い髪の毛が頬をくすぐり、懐かしい微かなレモンの香りに脈が早まる。柔らかさはなくとも、両腕で感じる輪郭や体温は間違いなく彼だと目頭が熱くなった。
「帰らないで」
「でも、怒ってるんじゃ……」
「だって悔しいじゃないですか。小野寺さんはいつも目前まで来たと思ったら離れていくし、俺の気持ちも聞いてくれない」
「……ごめんなさい」
「何が一番悔しいって、そんな人なのに忘れられないことです。つくづく自分の一辺倒さを呪いましたよ。俺だって小野寺さんを想わない日はなかった」
達也が両腕を握り締めてきた。俯いて体を震わせている。
「け、圭介とちゃんと別れてから……本当はもっと早く会いに来たかった。でも圭介を傷付けておいて自分だけ幸せでいいのかとか、先生と一緒にいながら、それでも圭介の心配をして先生に嫌な思いをさせるんじゃないだろうかとか、……でも、一番は……節操のない自分を正当化したかったから……。僕は、狡い、んです……」
「ちゃんと来てくれたからいいです。来てくれたってことは、もう白石さんのことは吹っ切れたんでしょ?」
「は、ぃ……、せ、んせい、会いたかっ……た」
むせび泣いて苦しげに言葉を切れさせながらも伝えようとしている姿が愛しい。雅久は達也を振り向かせて正面から抱き締めた。頬を包んで間近で見つめる。少し伸びた前髪も、涙で潤っている眼も雫が伝う頬も、やっぱりすべてが好きだと思った。それを口にする余裕もなく、血色の良い達也の唇を捉える。肌を合わせたこともあるのにキスは二度目だ。遠慮がちに重ねた唇は拒まれなかった。柔らかいキスはそれまで押しとどめていたものを解放するかのように激しいものへ変わり、互いに夢中で貪った。達也の手触りのいい黒髪をかき乱し、達也もそれに応えようと背中に腕を回してしがみついてくる。惜しみながら体を離し、かろうじて残っている理性を働かせて半開きのドアを完全に締め切ると、再び深いキスをしながら陽が当たっているフロアマットへ倒れ込んだ。手の平を達也の左胸の上に置くと、忙しなく脈打つ鼓動が伝わった。片方の手を自分の胸に手を当てる。同じように強く早く跳ねていた。
「やっと小野寺さんと一緒になれると思うと嬉しいです」
達也の左胸に手を当てたままキスをする。触れては離し、離しては触れてを繰り返しながら、平たい胸を揉みしだいた。達也が合わせている唇の隙間から息を洩らす。セーターを首までたくし上げて相変わらず白くて滑らかな肌に吸い付いた。もう誰にも遠慮しなくていいのだと、至る所に跡を残してく。
「ん、せ……せぃ……」
硬くなっている先端を舌で転がしたあとに甘噛みする。胸が弱いらしい達也は少し強めに押されるだけで雅久の髪を鷲掴みにして喘いだ。
「気持ちいい?」
「ぁ……、はぃ……き、もちいい……」
「他は? どこがいいです? ……こっちは?」
チノパンを押し上げている中心を包んだ。下着ごと下ろし、達也のすべてをまじまじと眺めた。鎖骨、脇の下から腰にかけてのラインを指でなぞる。内腿を撫でたあと、屹立に触れた。
「あっ」
亀頭は艶めかしく光っていて、指に絡めるとつるつる滑る。明るい陽の下では蜜が溢れるところも、先端の微かな動きもはっきり見えた。
「見ないで、下さい」
「見せて下さいよ、せっかく綺麗なんだから」
達也を口に含むと、しょっぱさと少しの甘みを感じた。正直言って男のものを口にするのは、いくら達也のものでも躊躇うのではないかという不安もあったが、実際目の前にすると嫌悪も躊躇も消え去っていて、ただ愛しさと興奮だけが支配した。自分も同じ男であるだけに大体の性感帯は予想がつく。雅久は達也のそれを唾液でいっぱいにして、舌を絡ませた。
「あぁんっ、あ、強くしないで……っ」
根元から先端ギリギリまで唇に力を入れて吸い、舌先で亀頭や割れ目を弄った。
「やぁ、っ……は、あっ、あ……」
早くも張り詰めている。直前で口を離すと、ほっとしたような恨めしそう眼で見られた。
「イカせてあげたいけど、もっといっぱい気持ちよくさせたいから、すみません」
そして左手でゆっくり扱いてやりながら、右手で全身を愛撫する。少し力を入れたら達也はすぐに果ててしまいそうだった。雅久は高みに昇らせつつ、けれど正気を保てる程度に柔らかく撫でた。本当は自分も堪えるのがギリギリのところだ。今すぐにでも割り入りたいところだが、傷付けたくはない。小さく音を立てて首筋にキスをした。達也の体が不自然に震えている。不安になって体を離したら、両腕で顔を隠して泣いていた。
「大丈夫ですか?」
「ごめんなさ……ちがう……勘違いかもしれないけど……、あ、愛されてるなぁって……思って……」
「……」
「あんまり、こういう時にしみじみ感じたことないんですけど……、今、すごく嬉しい」
「俺といる時に昔のこと思い出されるのは嫌だなぁ」
皮肉っぽく言ったら、達也は青い顔をして否定した。「そんなつもりじゃない」と慌てる達也に口元を綻ばす。
「冗談です。……勘違いじゃないですよ」
そして耳朶まで唇を近付けて囁いた。
「愛してます」
達也は雅久の首に両腕を回して引き寄せる。自ら唇を重ねにいくと、雅久の大きな口で塞がれ、乱暴な舌使いで口内を侵された。唾液を零しながら獣のように舐めとり、噛み付く。呼吸もままならない激しいキスをしながら、達也のものを包んでいる雅久の手にも力が籠もる。先走りで充分な潤いを持った達也を一気に頂まで引き上げた。左胸の先も一緒になって弾かれる。
「ああぁあっ、いく、ぅ……! は、あぁ……――っ」
雅久の手の中に吐精するも、指のあいだから白濁液が溢れた。自分でも信じられないほどの量だった。雅久は余韻を待たずに達也の膝裏を抱え、その精を後ろに塗りたくった。達したばかりで蕾はギュッとすぼまっているが、雅久の太くて温かい中指が強引に、けれどもゆっくりとほぐしていく。
「ん、んん、ぁ、……」
「痛くない?」
「だ、いじょうぶ……、ぁ……」
丁寧に指を抜き差しして、少しずつ掻き回しながら緊張を解く。ぎこちない指使いは達也の性感帯を探しているのだろう。達也は気を悪くさせないかと案じながら、その箇所へ導いた。
「お、おく……もう少し……あ、そこ……」
「ここ?」
くっ、と押されて、達也は体をよじらせて取り乱した。いきなり襲い掛かる快感に脱力して、脚はひとりでに開き、唾液も溢れてくる。
「あぁんっ、そこっ、せんせぇ……っ」
「小野寺さんがびっくりするくらい色っぽいんですけど……、俺も、もう挿れたい……」
カチャカチャとベルトを外す音が聞こえたあと、ずらしたデニムパンツから雅久の逞しい雄が姿を現した。グロテスクで男らしい雅久のそれは、しっかり上を指していて先端を湿らせていた。達也は生唾を飲み、上半身を起こすと、今度は雅久をマットに仰向けになるよう促した。戸惑っている雅久をよそに、達也は雅久の下半身に顔を埋める。脈を打っている雄を口に含むと、雅久は達也の頭を掴んで焦りを見せた。
「小野寺さん!?」
「僕もしたいんです。させてください」
唇に力を入れて隙間なく吸い付く。ゆっくり根本に向かうが、大きすぎて含み切れない。なんとか満足させたくて、達也はあの手この手で性感帯を探した。下生えをざりざりと掻き分けながら竿の裏筋に舌を這わせ、袋を揉む。人差し指と親指の輪で上下にスライドさせるとみるみる硬度を増し、粘り気のある音がよりはっきり立った。
「……っく、う、ぁ、ちょ……ストップ……」
それでも手を止めずにいると起き上がった雅久に手首を掴まれて阻止された。
「小野寺さんの中でイキたい」
そして再び寝かされて、腰を高く持ち上げられる。蕾に宛がわれて、「いいですか」という問いに答える間もなく入り込む。奥へ進むごとに達也は体をのけ反らせた。行為自体が久しぶりなので痛みはあるが、それよりも待ち侘びた瞬間への喜びのほうが大きく、異物感すら心地良い。完全に繋がると、雅久は深く息を吐きながら達也の背中の下に両腕を滑り込ませて抱き締めた。
「あったかい……。痛くない?」
「あ……ぅ、いたくな……い」
強く胸を吸われながら雅久の腰が動き出す。じょじょにスピードを上げて、更に奥を突かれた。
「ひぁっ、あ、あんんっ、もっと、……せんせ……っ!」
皮膚の擦れる音、溢れる淫液、すぐ傍で聞こえる息遣い、すべてが官能的で魅惑的すぎて、達也は必死に雅久にしがみついて一緒になって腰を動かした。
「小野寺さん……はぁ、気持ち、いい……?」
「きもちい、いぁ……っ、あっ、先生はっ……、先生も……気持ちい、い? 僕で……ちゃんと……ぁ」
「いいです、すごくいい……っ」
無我夢中とはこのことだった。体を押し付けて脚を絡め、首を、胸を味わい、一心不乱にぶつかり合って唇を奪い合った。雅久の波打つそれは溶けそうなほど熱い。
「もっと、せんせい、もっとキスして……、んっぁ、はぁっ、あ、――んッ」
「もう、すぐイキそ……っ」
食らい付くように唇を覆われ、体を揺さぶられる。激しいピストンに腰も背中も砕けそうだった。雅久がギリギリまで引き抜いた瞬間、身構える。そしてひと思いに貫かれた。
「ふ、っ……あ、んん―――っ……!」
体内で感じる痙攣、広がる熱、それを噛みしめながら、とうとう果てた。
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「……」
「圭介と話がつかないまま、堤先生と一緒にいるわけにいかないと思ったんです。もっと早く連絡できれば良かったんですけど、僕の気持ちの整理がなかなかつかなかったものですから……」
微動だにしない雅久の後姿に不安を覚えたのか、達也は「怒ってますか?」と機嫌を窺った。雅久はあえて返事をしなかった。
「そうですよね、僕はいつも自分勝手だから……。本当にごめんなさい。でも、これだけどうしても伝えたかったんです。それを言ったら帰ります」
雅久は少しだけ首を動かす。
「僕は堤先生が好きです。先生はもう僕のことは嫌いになったかもしれないけど、先生を想わない日はありませんでした」
思わざる告白に、不本意であるはずがない。唐突すぎて硬直しているだけだ。達也に背を向けたまま、目を泳がせて静かに驚いていた。雅久のあまりの反応の薄さに、達也は諦めたようで、消え入りそうな声で「それだけです」と残した。ガラスに映った達也が踵を返すと雅久はようやく動いて、去ろうとする達也の背中を抱き締める。細い髪の毛が頬をくすぐり、懐かしい微かなレモンの香りに脈が早まる。柔らかさはなくとも、両腕で感じる輪郭や体温は間違いなく彼だと目頭が熱くなった。
「帰らないで」
「でも、怒ってるんじゃ……」
「だって悔しいじゃないですか。小野寺さんはいつも目前まで来たと思ったら離れていくし、俺の気持ちも聞いてくれない」
「……ごめんなさい」
「何が一番悔しいって、そんな人なのに忘れられないことです。つくづく自分の一辺倒さを呪いましたよ。俺だって小野寺さんを想わない日はなかった」
達也が両腕を握り締めてきた。俯いて体を震わせている。
「け、圭介とちゃんと別れてから……本当はもっと早く会いに来たかった。でも圭介を傷付けておいて自分だけ幸せでいいのかとか、先生と一緒にいながら、それでも圭介の心配をして先生に嫌な思いをさせるんじゃないだろうかとか、……でも、一番は……節操のない自分を正当化したかったから……。僕は、狡い、んです……」
「ちゃんと来てくれたからいいです。来てくれたってことは、もう白石さんのことは吹っ切れたんでしょ?」
「は、ぃ……、せ、んせい、会いたかっ……た」
むせび泣いて苦しげに言葉を切れさせながらも伝えようとしている姿が愛しい。雅久は達也を振り向かせて正面から抱き締めた。頬を包んで間近で見つめる。少し伸びた前髪も、涙で潤っている眼も雫が伝う頬も、やっぱりすべてが好きだと思った。それを口にする余裕もなく、血色の良い達也の唇を捉える。肌を合わせたこともあるのにキスは二度目だ。遠慮がちに重ねた唇は拒まれなかった。柔らかいキスはそれまで押しとどめていたものを解放するかのように激しいものへ変わり、互いに夢中で貪った。達也の手触りのいい黒髪をかき乱し、達也もそれに応えようと背中に腕を回してしがみついてくる。惜しみながら体を離し、かろうじて残っている理性を働かせて半開きのドアを完全に締め切ると、再び深いキスをしながら陽が当たっているフロアマットへ倒れ込んだ。手の平を達也の左胸の上に置くと、忙しなく脈打つ鼓動が伝わった。片方の手を自分の胸に手を当てる。同じように強く早く跳ねていた。
「やっと小野寺さんと一緒になれると思うと嬉しいです」
達也の左胸に手を当てたままキスをする。触れては離し、離しては触れてを繰り返しながら、平たい胸を揉みしだいた。達也が合わせている唇の隙間から息を洩らす。セーターを首までたくし上げて相変わらず白くて滑らかな肌に吸い付いた。もう誰にも遠慮しなくていいのだと、至る所に跡を残してく。
「ん、せ……せぃ……」
硬くなっている先端を舌で転がしたあとに甘噛みする。胸が弱いらしい達也は少し強めに押されるだけで雅久の髪を鷲掴みにして喘いだ。
「気持ちいい?」
「ぁ……、はぃ……き、もちいい……」
「他は? どこがいいです? ……こっちは?」
チノパンを押し上げている中心を包んだ。下着ごと下ろし、達也のすべてをまじまじと眺めた。鎖骨、脇の下から腰にかけてのラインを指でなぞる。内腿を撫でたあと、屹立に触れた。
「あっ」
亀頭は艶めかしく光っていて、指に絡めるとつるつる滑る。明るい陽の下では蜜が溢れるところも、先端の微かな動きもはっきり見えた。
「見ないで、下さい」
「見せて下さいよ、せっかく綺麗なんだから」
達也を口に含むと、しょっぱさと少しの甘みを感じた。正直言って男のものを口にするのは、いくら達也のものでも躊躇うのではないかという不安もあったが、実際目の前にすると嫌悪も躊躇も消え去っていて、ただ愛しさと興奮だけが支配した。自分も同じ男であるだけに大体の性感帯は予想がつく。雅久は達也のそれを唾液でいっぱいにして、舌を絡ませた。
「あぁんっ、あ、強くしないで……っ」
根元から先端ギリギリまで唇に力を入れて吸い、舌先で亀頭や割れ目を弄った。
「やぁ、っ……は、あっ、あ……」
早くも張り詰めている。直前で口を離すと、ほっとしたような恨めしそう眼で見られた。
「イカせてあげたいけど、もっといっぱい気持ちよくさせたいから、すみません」
そして左手でゆっくり扱いてやりながら、右手で全身を愛撫する。少し力を入れたら達也はすぐに果ててしまいそうだった。雅久は高みに昇らせつつ、けれど正気を保てる程度に柔らかく撫でた。本当は自分も堪えるのがギリギリのところだ。今すぐにでも割り入りたいところだが、傷付けたくはない。小さく音を立てて首筋にキスをした。達也の体が不自然に震えている。不安になって体を離したら、両腕で顔を隠して泣いていた。
「大丈夫ですか?」
「ごめんなさ……ちがう……勘違いかもしれないけど……、あ、愛されてるなぁって……思って……」
「……」
「あんまり、こういう時にしみじみ感じたことないんですけど……、今、すごく嬉しい」
「俺といる時に昔のこと思い出されるのは嫌だなぁ」
皮肉っぽく言ったら、達也は青い顔をして否定した。「そんなつもりじゃない」と慌てる達也に口元を綻ばす。
「冗談です。……勘違いじゃないですよ」
そして耳朶まで唇を近付けて囁いた。
「愛してます」
達也は雅久の首に両腕を回して引き寄せる。自ら唇を重ねにいくと、雅久の大きな口で塞がれ、乱暴な舌使いで口内を侵された。唾液を零しながら獣のように舐めとり、噛み付く。呼吸もままならない激しいキスをしながら、達也のものを包んでいる雅久の手にも力が籠もる。先走りで充分な潤いを持った達也を一気に頂まで引き上げた。左胸の先も一緒になって弾かれる。
「ああぁあっ、いく、ぅ……! は、あぁ……――っ」
雅久の手の中に吐精するも、指のあいだから白濁液が溢れた。自分でも信じられないほどの量だった。雅久は余韻を待たずに達也の膝裏を抱え、その精を後ろに塗りたくった。達したばかりで蕾はギュッとすぼまっているが、雅久の太くて温かい中指が強引に、けれどもゆっくりとほぐしていく。
「ん、んん、ぁ、……」
「痛くない?」
「だ、いじょうぶ……、ぁ……」
丁寧に指を抜き差しして、少しずつ掻き回しながら緊張を解く。ぎこちない指使いは達也の性感帯を探しているのだろう。達也は気を悪くさせないかと案じながら、その箇所へ導いた。
「お、おく……もう少し……あ、そこ……」
「ここ?」
くっ、と押されて、達也は体をよじらせて取り乱した。いきなり襲い掛かる快感に脱力して、脚はひとりでに開き、唾液も溢れてくる。
「あぁんっ、そこっ、せんせぇ……っ」
「小野寺さんがびっくりするくらい色っぽいんですけど……、俺も、もう挿れたい……」
カチャカチャとベルトを外す音が聞こえたあと、ずらしたデニムパンツから雅久の逞しい雄が姿を現した。グロテスクで男らしい雅久のそれは、しっかり上を指していて先端を湿らせていた。達也は生唾を飲み、上半身を起こすと、今度は雅久をマットに仰向けになるよう促した。戸惑っている雅久をよそに、達也は雅久の下半身に顔を埋める。脈を打っている雄を口に含むと、雅久は達也の頭を掴んで焦りを見せた。
「小野寺さん!?」
「僕もしたいんです。させてください」
唇に力を入れて隙間なく吸い付く。ゆっくり根本に向かうが、大きすぎて含み切れない。なんとか満足させたくて、達也はあの手この手で性感帯を探した。下生えをざりざりと掻き分けながら竿の裏筋に舌を這わせ、袋を揉む。人差し指と親指の輪で上下にスライドさせるとみるみる硬度を増し、粘り気のある音がよりはっきり立った。
「……っく、う、ぁ、ちょ……ストップ……」
それでも手を止めずにいると起き上がった雅久に手首を掴まれて阻止された。
「小野寺さんの中でイキたい」
そして再び寝かされて、腰を高く持ち上げられる。蕾に宛がわれて、「いいですか」という問いに答える間もなく入り込む。奥へ進むごとに達也は体をのけ反らせた。行為自体が久しぶりなので痛みはあるが、それよりも待ち侘びた瞬間への喜びのほうが大きく、異物感すら心地良い。完全に繋がると、雅久は深く息を吐きながら達也の背中の下に両腕を滑り込ませて抱き締めた。
「あったかい……。痛くない?」
「あ……ぅ、いたくな……い」
強く胸を吸われながら雅久の腰が動き出す。じょじょにスピードを上げて、更に奥を突かれた。
「ひぁっ、あ、あんんっ、もっと、……せんせ……っ!」
皮膚の擦れる音、溢れる淫液、すぐ傍で聞こえる息遣い、すべてが官能的で魅惑的すぎて、達也は必死に雅久にしがみついて一緒になって腰を動かした。
「小野寺さん……はぁ、気持ち、いい……?」
「きもちい、いぁ……っ、あっ、先生はっ……、先生も……気持ちい、い? 僕で……ちゃんと……ぁ」
「いいです、すごくいい……っ」
無我夢中とはこのことだった。体を押し付けて脚を絡め、首を、胸を味わい、一心不乱にぶつかり合って唇を奪い合った。雅久の波打つそれは溶けそうなほど熱い。
「もっと、せんせい、もっとキスして……、んっぁ、はぁっ、あ、――んッ」
「もう、すぐイキそ……っ」
食らい付くように唇を覆われ、体を揺さぶられる。激しいピストンに腰も背中も砕けそうだった。雅久がギリギリまで引き抜いた瞬間、身構える。そしてひと思いに貫かれた。
「ふ、っ……あ、んん―――っ……!」
体内で感じる痙攣、広がる熱、それを噛みしめながら、とうとう果てた。
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