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archive: 2023年01月  1/1

BREAK OUT-LOW 最終話

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 屋根の修理が落ち着いたら果物の収穫をするから先に帰れと言われ、日が暮れる頃に家に戻った。庭に立って西の空を見上げると、丁度太陽が沈もうとしている。一日を通して、夕方が一番好きだ。抗うように空を赤く染めて大きな太陽が燃え上がったかと思えば、今度は力つきたように紫色のグラデーションを彩りながら姿を消していく。どこの国にいても見られるけれど、いつ見ても瞠るほど美しくてそこはかとなく切ない。完全に燃え尽...

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BREAK OUT-LOW 9-1

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 ―― 一年後 ベトナム  ハンモックに揺られているうちに寝てしまっていたらしい。木陰で風に当たりながら夢と現実を行き来する、そんなのどかな午後を過ごしていたら隣人が騒がしい声を上げながら敷地内に入ってきた。「タイン! ロンはいるか!? 昨日の大雨でナムの家の屋根が壊れたんだ。修理を手伝ってくれ!」 すぐにハンモックから飛び下りて、準備をする。二階の寝室に向かって叫んだ。「恭……ロン! 起きろ! ナムの...

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BREAK OUT-LOW 8-3

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「悪く思わんで下さい。組長に何かあったら本部長を殺せっていう命令だったんで」「なるほど、どいつもこいつもブタの言いなりってか」 互いに銃を持った状態で、一人で十数人を相手にするのはさすがに困難だ。詰みを覚悟した直後、いきなり事務所内の灯かりがすべて消えた。既に陽が落ちているせいもあって室内が暗闇に包まれる。組員たちは急な暗がりに視界を確保できずうろたえていたが、恭一は不測の事態にも対応できるように...

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BREAK OUT-LOW 8-2

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「……牛田がやったのは本当か?」「そのようです」「そのようです、だ? お前の側近だろうよ、牛田は。なに他人事のように言ってんだ」「牛田は片山を可愛がっていました。その片山がカシラに殺されて、牛田は片山の仇を討つためにカシラを殺した、と、俺は聞いています。何が原因で揉めたかは存じません」 しばらく二人は睨み合ったまま動かなかった。充血した秋元の目は恭一を疑っている。「だったら何故、葬式に来なかった? ...

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BREAK OUT-LOW 8-1

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 青木の葬儀が終わった頃、秋元から狂ったように着信履歴が残っていて「すぐに顔を出さないと問答無用で殺す」とメッセージが入っていた。ここまできて暗殺でもされたら馬鹿馬鹿しいので、恭一は「折り入って話があるので事務所へ行く、それまでおとなしくしていて欲しい」と願い出た。『ふん、なんの話か知らんが、俺もそこまで鬼じゃない。お前、中国人から二億預かってるだろう。金の動きがないんで怪しまれてるぜ。昨日、ウチ...

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BREAK OUT-LOW 7-4

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 すっかり欲情したケダモノの眼で薄笑いを浮かべる恭一と目が合った。「昨日は二回もお前に主導権握られたから、今日は俺の好きなようにやらせてもらうぜ」 ちょっとした恐怖とともに、それ以上に期待した自分は変態かもしれなかった。答えずにいると恭一は了承したのだと受け取ったらしく、強引に手首を引っ張られて傍のダブルベッドに投げ飛ばされた。恭一が覆い被さり、ゆっくり顔が近付いてきて唇を重ねた。一度合わせると理...

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BREAK OUT-LOW 7-3

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*** 真鍋さん、自分は今から出頭します。 カシラをやったのは、自分です。 真鍋さんも雨宮も関係ない。全部自分がやったことです。 自分が一番尊敬して一生付いていきたいと思えた人は、真鍋さんだけでした。 これからも、どうかそのまま、真鍋さんは真鍋さんのために生きて下さい。 面会も差し入れもいりません。通話履歴もメッセージも消して下さい。 ただ、ひとつだけ願い事を許していただけるなら、弟を頼みます。「...

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BREAK OUT-LOW 7-2

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「な、なんで」「青木から聞いたのか」 その言葉が、すべてが真実であることを証明した。祥平は唇を震わせながら恭一と向き合った。「あいつが言ってた……親父の会社が倒産した原因は恭一にあるって……本当なのかよ……」「……本当だ」 違うと言って欲しかった。恭一は言い訳すらしようとしない。目の前が真っ暗になる。「青木がどう説明したかは知らんが、おおむね事実だ。本当は俺の口からちゃんと説明するべきだったけど……すまなか...

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BREAK OUT-LOW 7-1

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 牛田が後始末をすると申し出てくれたので、恭一と祥平は先に工場倉庫を去った。近くの港で片山の車が待機してあるらしく、土砂降りの中を全速力で駆けて向かった。車に乗ったらすぐに発車する。まるで犯罪者の逃亡だ。いや、まさに、である。 青木を殺した。両親の、兄の仇をついに討った。けれどもその実感はいまだ湧かず、ただただ妙な興奮だけが残っていた。 無事にマンションに戻ってはこられたが、安心することなんてでき...

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