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archive: 2022年11月  1/2

BREAK OUT-LOW 4-1

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 ―― 十年前「組を抜けたいだと?」 野村が殺されて組長の座を秋元が引き継ぎ、青木が若頭に就任した直後のことだった。野村の死は恭一にとって想像以上にショックなものだった。 野村は人情深い男だった。鬼のように厳しい面はもちろんあるが、子分を本当の我が子のように可愛がっていた。生活が厳しければ小遣いをやりつつも自力でシノギを見つけて自立できるように支援し、身内が不幸に遭えば陰ながら援助をするような人間だ...

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BREAK OUT-LOW 3-4

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「ああ、思い出した。あったな、そんなこと。でもかなり昔の話じゃないか? なんで今更そんな話を出すんだよ」「あまや興産の社長の息子に会った」「子どもなんかいたっけな。もう覚えてないね。それで?」 新しい煙草に火を点ける。今度は昔の話を肴に味わうようだ。「……仕事の取引相手でたまたま知ったんだ。生い立ちを聞く機会があったんで興味本位で聞いてみたら、親父があまや興産の元社長で、闇金に騙されて借金まみれにな...

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BREAK OUT-LOW 3-3

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 *** 珍しく秋元が不在で事務所が静かなので、タブレットでアダルト動画を観ていた。思えば長らく女を抱いていない。いくら顔が良くても、あんなにか細い男にその気になるなんてどうかしている。雄としての勘を取り戻すかのように動画を漁った。だが、どういうわけかどんなに過激なものを見ても興奮できない。大袈裟に喘ぐ女優の声すらやかましく思える。裸体に飽きてタブレットを閉じたと同時に、ドアが開いた。「外まで音が...

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BREAK OUT-LOW 3-2

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 自宅に着いて部屋のドアを開けるなり、ドタドタと騒がしい足音を立てながら祥平が現れた。そして開口一番に突っかかってくるのである。「ちょっと! なんなんだよ、このシャツ!」 そう言って祥平は自身が着ているTシャツの裾を引っ張った。まぬけな猫のイラストが大きくプリントされたTシャツだ。恭一はそれを見るなり声を出して笑った。「似合ってるじゃねーか、それ牛田が買ってきたやつだろ? いいセンスしてるわ」「牛...

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BREAK OUT-LOW 3-1

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 梅雨が明けて快晴が続き、今年も夏が来たかと思えばまた雨の日が続いた。じめじめと肌に纏わりつく湿気と生温い気温が気持ち悪い。夏に降る雨は嫌いだ。じっとり汗をかいているせいか、背中に張り付くワイシャツも不快である。早く体を冷やしたくて運転している牛田にエアコンの風量を上げろと指示した。「真鍋さん、このあいだの中国人から依頼が来てますけど」「また? あいつ怪しいんだよな。ちょっと保留にする」「了解です...

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BREAK OUT-LOW 2-4

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 ――― 片山には祥平を恭一のマンションまで連れて来いと言ってある。祥平が片山に引っ張られてきたのは、恭一が自宅に着いて五分後のことだった。 広いリビングに真っ黒な革のソファ。恭一はそのソファの真ん中に座り、テーブルを隔てて祥平を前に立たせた。オーバーサイズのだらしないTシャツ、ナチュラルに破れたデニム。小汚い格好だ。祥平は目深に被っていたキャップを取った。鋭い生意気な目と視線が合った。祥平は背負っ...

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BREAK OUT-LOW 2-3

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 祥平のアパートには大体三日おきに様子を見に行った。いつ行っても祥平はだらしのない格好で寝ていることが多く、とても必死で金を集めているようには見えなかった。恭一がいない時に行動しているのかと思って片山に聞いても、祥平は一日のほとんどを家の中で過ごし、外出は近くのコンビニに食料を調達する時くらいだと言った。「日中はずーっと寝てますね。夜は俺も寝てるんで分からないんすけど、今のところ一銭も稼いでなさそ...

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BREAK OUT-LOW 2-2

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 ――― 監視の片山経由で祥平の家を突き止めていた恭一は、車ではなくあえてバスと徒歩で家に行った。祥平の家は下町にある古いアパートだ。そんなところに黒塗りの車で行ったら悪目立ちする。なんの連絡も挨拶もなくずかずかと部屋に押し入り、スパン、とシミだらけの襖を開けると、薄い布団の上でうつ伏せになっている祥平がいた。「おい、ショウキチ。起きろ」 つま先で脇をつつくと飛び起きた。そして寝ぼけ眼の不機嫌そうな...

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BREAK OUT-LOW 2-1

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 秋元に仕事の進捗の報告を終えて事務所を出たところで、青木と出くわした。 細身でブリオーニのスーツを着こなす姿は、会計士や弁護士などを名乗ってもおかしくなさそうな紳士的な出で立ちだ。だが今、目の前にいる彼は片目がガーゼで覆われており、額に巻かれた包帯が痛々しい。隠しきれていない傷や痣も見られた。せっかくのスレンダーなイケメンが台無しである。ただ、足取りはしっかりしているので思ったより軽傷だったよう...

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BREAK OUT-LOW 1-4

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 いつの話か知らないが、連中が誰かを殺すなんて珍しい話ではない。殺す、というより自死に追い込む、というほうが正しいかもしれない。「……お前、振り込め詐欺しようとしたか?」 祥平がぎょっとした顔で恭一を見上げる。「かけ子だろ。そして仲間の出し子が金を持って逃走。お前はそいつの尻拭いをさせられそうになって逃げてきた」「なんでそれを」「俺も野村組なんでね」「じゃあ知ってるのか!?」「うるさい、聞け。……つい昨...

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