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archive: 2022年09月  1/1

お前は幼なじみで、親友で

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(あらすじ)高校三年の昇は幼なじみの大智と仲がいい。毎朝大智と双子の妹・理沙と3人で一緒に登校する時間が好きだった。受験を控えたある日、昇は同じ委員会の女の子、大川と親しくなり、恋心を抱くようになる。卒業前になんとか付き合いたくて大川に告白をするが、反応は芳しくない。その理由は大智に「昇との仲を邪魔するな」と言われたからだと打ち明け、昇は思いがけない形で大智の気持ちを知ることになる。*第一部*■1-...

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大智 5

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 昇は充希と違って家の中でも外でもくっつきたがらない。けれども今日だけは、嫌だと言われても昇に触りたくて仕方がない。昇の手首をがっちり掴んでアパートの階段を上がる。「別に逃げたりしねーから、手ぇ離せよ」 そう言われても離さなかった。我ながら気味が悪いほどの束縛力だ。 部屋に入ってドアが閉まるなり、キスをする。がっついているのは俺ばっかりで、戸惑っている昇の半開きの口を、何度も何度も覆った。無理やり...

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大智 4

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 *** 念のため昇には金曜の予定を聞いたが、やはり「早く帰れるかどうか分からない」と返事が来た。なのであまり気は進まないが充希を家に呼ぶことにする。 金曜日は俺は午前中ですべての授業が終わる。単位取得に追われている充希は夕方まで講義が入っているので、終わったら近くのスーパーに寄れと言ってある。酒のつまみの総菜を買って、一緒にアパートまで戻る予定だ。 授業は六時前には終わるので、その頃を見計らって...

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大智 3

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 日曜日は少しラインのやりとりをしただけで別々に過ごし、物足りないまま月曜日になった。昇は今週は忙しいと言っていたので、家に来る予定はないだろう。こっちから訪ねてもいいけれど、長期休みでもないのにわざわざ地元まで押しかけるのも迷惑かもしれないと思うと我慢するしかないのだった。 昇に好きだと言われてから、いつの間にか三ヵ月が過ぎていた。今は入学、卒業、進級の季節だから本当に忙しいのかもしれない。大学...

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大智 2

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 用意しておいたスウェットは昇には大きかったらしく、かなりゆったりと着崩していた。俺はそれも似合うんじゃない、とわりと本気で言ったが、昇は気に入らなかったらしく自分の背の低さを嘆いていた。別に昇は特別小さいわけじゃない。単に俺がでかいだけなのに。 ベッドもシングルに男二人はキツすぎた。俺が床で寝るよと申し出ても、昇はけっこうだと頑なに断った。「俺が泊まらせてもらってんだから、俺が床で寝る。毛布一枚...

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大智 1

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小学三年生の夏の日、母さんに連れられて初めて引越し先の土地で公園に行った。それまでどちらかというと外で遊ぶのは好きじゃなく、家で本を読んだりゲームをするほうが好きだった。たぶん、東京に住んでいた頃近所に住んでいた兄ちゃんの影響だろう。だからなかば強引に公園に行こうと連れ出された時は、とにかく嫌で、面倒で、暑かった。「あんな変な子と遊ばせるんじゃなかったわ。これからはまともなお友達を作ってちょうだい...

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第二部 2-9

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 親父は自分の死期を知っていたかのように身辺整理をきちんとして旅立った。死後、なんの手続きがあってどのくらいの保険が下りるのか、どこの銀行に連絡するのか、なんの株を持っていたのか、すべての情報を一冊のファイルにまとめて書斎の机の上に置いていたのだ。私物はほとんど処分されていて、クローゼットには数枚の部屋着とスーツだけ、机の引き出しの中はほとんどカラッポだった。ただ、高価な腕時計やネクタイだけは、俺...

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