fc2ブログ

B-R-eath

ARCHIVE PAGE

archive: 2022年06月  1/1

第一部 2-5

No image

 模試が近いこともあって数日学校を休むと連絡を入れた。どうせたいした授業なんてないのだ。休んだところで影響はない。親父は反対しなかった。一方、勘のいい理沙は訝しんだ。なるべく態度に出さないように明るく振る舞ったのに、「何かあったの?」と鋭く聞かれた。「昇、学校好きなのにそんな理由で休むなんて初めてじゃない? 高校受験の時だって一回も休んだことなかったのに」「高校受験と大学受験は違うだろ。……大智にし...

  •  0
  •  closed

第一部 2-4

No image

 いくら大智に牽制されたとはいえ、俺と大川さんの気持ちが同じなら誰も気にする必要はないんだ。いくらそう言っても大川さんは最後まで首を縦に振らなかった。これ以上一緒に出掛けられないから、と残して背を向けられる。俺は一瞬にしてフラれたことも、大智がしたことも受け入れられないまま立ち尽くすしかなかった。 大川さんが嘘をついていると思えないけど、大智がそんなことをするとも信じられない。一体どういうことなん...

  •  0
  •  closed

第一部 2-3

No image

 ―――大川さんとは校門の前で待ち合わせの約束をしている。昨日行った本屋には欲しかった本がなかったから、今日は別の店に行こうと大川さんから誘ってくれたのだった。告白するなら今日だろう。なんて言おうか、どのタイミングがいいのか。なんだか気持ちが落ち着かなくて、帰りのホームルームはいつもよりも長く感じた。「起立! 礼!」 日直の号令に勢いよく立ち上がり、解散になった瞬間教室を飛び出した。二段飛ばしで階段...

  •  0
  •  closed

第一部 2-2

No image

 大川さんと親しくなるごとに彼女の良さには気付くことばかりだし、一緒にいると小さなことでもあったかい気持ちになる。これはもしかしてすごくいい感じなんじゃないかと、淡い期待はほぼ確実なものになっていった。できるなら付き合いたいという願望は日に日に大きくなり、告白するなら早いうちがいいと唐突に決心した。一気に距離を縮めるためにこれから朝は大川さんと登校しようか。いつまでも妹と幼馴染とつるんでたんじゃ進...

  •  0
  •  closed

第一部 2-1

No image

 大川さんとドーナツ屋で話しているうちに、俺の家と大川さんの家がわりと近いことを知った。もしかしたら帰りが一緒になることがあるかもしれないね、と言ったら、その時はまた寄り道をしようと誘ってくれた。その流れで参考書を見たいから本屋に行かないかという話になり、それがさっそく次の日に決まった。……というのを登校中に大智に話したら、「え?」と目を丸くしていた。「すまん、そういうわけだから、今日はちょっと先に...

  •  0
  •  closed

第一部 1-7

No image

 *** さっそく大智と理沙からもらった財布を持って購買にパンを買いに行く。途中で大智と会ったので連れ立った。大智は俺が持っている財布を見て「使ってるんだ」と口角を上げた。「俺がこれ欲しがってたの、知ってた?」「だって本屋で雑誌見る度にその財布が載ってるページ見てたじゃん」 俺が見ている本のページすら覚えている。興味がなさそうで些細なことでも実はちゃんと見ているから、一体どこまで知っているのだろう...

  •  0
  •  closed

第一部 1-6

No image

「もしかして」「プレゼント。誕生日おめでとう。それは昇のだから。理沙にはこの間あげた」「わざわざ? ありがとう! 寒いだろ、今からピザ食うから一緒にどう?」「いや、帰ったら飯あるから。また明日」 くるっと背を向けると、大智は姿勢よく走り出した。ランニングついでに来てくれたのか。つい数日前にドーナツを買ってきてくれたばかりだというのに。「あれ、大ちゃん帰っちゃったの?」 理沙がピザを頬張りながらやっ...

  •  0
  •  closed

第一部 1-5

No image

 日曜日の昼頃、部屋で勉強をしていたら珍しく親父が入ってきた。「昇、今日の夜は家にいるのか」「いるけど」「じゃあ、今日はみんなで揃って夕食を食べよう」 いつもは家族三人が揃って夕食を摂ることはほとんどない。親父は毎日のように遅くまで仕事をしているし、俺と理沙も自分の好きな時間に食べるから特に夕飯の時間というのも決まっていない。食べるものは親父が作り置きしておいたおかずか、理沙が冷蔵庫にあるもので適...

  •  0
  •  closed