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archive: 2022年03月  1/1

山城 天 11

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 *** 毎日のようにあった恵一さんからの電話は途絶えてたちまち暇を持て余した。いつも十一時前後に鳴るはずのスマートフォンが鳴らないと、自業自得とはいえ不安を覚える。けれども、自分から見合いに行けと勧めておいてこちらから電話をするのは無神経なので、もう放っておくことにする。 放っておくと決めたものの何かをしていないと一人の時間に耐え切れない。都合がいいという自覚を持ちながら、かつて親しかった女の子...

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山城 天 10

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 *** 日曜日の朝、恵一さんからは「今から母と会ってくる」と一言メッセージがあったきり詳しいことは教えられなかった。店に来るならひと言知らせてくれるだろうと思っていたので呑気にかまえていたら、閉店時間を過ぎてブラインドを閉めようとしたところで恵一さんの車が店の前で止まった。俺は慌ててトイレに駆け込んで、乱れた髪の毛を手櫛で整える。エプロンも汚れているけどそれは仕方ない。パッパッと埃をはらって紐だ...

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山城 天 9

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 暗い住宅街の中にポツンと一棟だけマンションが建っている。そこを恵一さんは十年前から借りているらしい。あまり詳しく聞かされなかったのは、美紀さんと暮らしていた部屋だからだろう。 こじんまりした1LDKだけど、明るくて綺麗な部屋だった。ダイニングに垂れ下がっている北欧風の可愛らしいライトは、たぶん美紀さんの趣味だったんだろう。ただ、それ以外は適度に散らかっていて、仕事のファイルや新聞、タブレットなど...

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