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archive: 2022年01月  1/1

高橋 恵一 11

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 ――― こういうの傷の舐め合いって言うのかな、と山城が呟いた。 煮物や魚の南蛮漬けといった意外にも家庭的な料理をもてなされ、申し訳程度に点いているテレビのバラエティに茶々を入れたりしながら、どうでもいい話ばかりしていた。酒を飲んだせいもあるだろう。いい気分になって互いに隙を見せたところで、そんなことを言いだした。「フラれた傷を癒すために、本来なら相容れない関係の俺たちがまさか酒を飲み交わすなんて、...

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高橋 恵一10

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 翌日から俺はほぼ毎日、仕事帰りに花屋に寄るようになった。気分にムラがあるのか、店は開けたり閉めたりしている。客からすればそんな不安定な花屋など愛想が尽きそうなものだが、離れていくどころかみんな山城を心配していく(表向きは「体調不良」と言っているらしい)。わざわざケーキや果物を届けるためだけに訪れる人間もいた。山城も客の前では笑顔を絶やさない。そして彼の作るブーケはいつだって美しかった。 閉店後は...

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高橋 恵一 9

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 ―――「いや、だからさ。なんで来るわけ?」 車の中で山城に電話を掛けたら、一応営業はしているが開店休業状態だから来るなと言われた。そう言われても電話を切った直後に店に着いたので、何食わぬ顔で足を踏み入れたら煙たがられたというわけだ。 開店休業、というのはこのことか。客は一人もいないし、いつもより店内が暗いと思ったらガラス張りのキーパーは電気が消えていて、鉢植えはともかく切り花が随分減っている。山城...

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