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category: ★パンドラとため息のブーケ  1/6

パンドラとため息のブーケ

(あらすじ)学生時代からの付き合いの彼女と結婚して9年。子どもはいないながらも夫婦仲は順調だと思っていた矢先、恵一は妻の浮気を知ってしまう。動揺した恵一はどうすべきか分からず、妻を問い詰めるより先に浮気相手の男にコンタクトを取り、話を聞くことに。現れた妻の浮気相手は思いがけず若くて美しい青年で恵一はますます困惑してしまい……。第一章■高橋 恵一 1■高橋 恵一 2■高橋 恵一 3■高橋 恵一 4■高橋 恵...

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山城 天 14

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*** クリスマスイヴに初雪が降った。店じまいをしようと花を中に運んでいる最中に気付いた。見上げると夜空から白い粒が零れてきて、頬に落ちては消えた。 積もらずに明日には止んでいるだろう。そう思うとさっさと中に入るのも勿体なくて、暫く空を見上げていた。明日はクリスマスなんだから、サンタとトナカイでも通らないかな、なんて子供じみた妄想をする。ふと馬鹿らしくなって視線を落とすと、さっきまでいなかったはず...

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山城 天 13

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 車内ではお互いそっぽを向いたままでひたすら沈黙に包まれた。ミラーに映る恵一さんの眼は険しい。このまま別れるのは後味が悪いが、それも言ってしまえば俺が自ら仕向けたことだ。どうして俺はこうも人間関係を築くのが下手なのだろう。はあ、と溜息をついたら恵一さんがおもむろに口を開いた。「俺はいつも相手に気持ちが伝わらない。自分ではちゃんと伝えていたつもりでも、いつだって最後は好きじゃないんだろうと言われてし...

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山城 天 12

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 店を出ると夜風が冷たかった。そろそろ店をクリスマス仕様にしないと、とか、ポインセチアを増やさないと、とかこんな時でも無意識に仕事のことを考えてしまう。 家はどこ、と聞かれて、自宅を教えたくなかったので電車に乗るから駅に向かうと嘘をついた。男と別れたらタクシーを拾えばいい。 道すがら、男は身の上話をしてくれた。彼は小学生の頃には自分が同性愛者だということに気付いていて、誰にも打ち明けられずに苦しい...

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山城 天 11

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 *** 毎日のようにあった恵一さんからの電話は途絶えてたちまち暇を持て余した。いつも十一時前後に鳴るはずのスマートフォンが鳴らないと、自業自得とはいえ不安を覚える。けれども、自分から見合いに行けと勧めておいてこちらから電話をするのは無神経なので、もう放っておくことにする。 放っておくと決めたものの何かをしていないと一人の時間に耐え切れない。都合がいいという自覚を持ちながら、かつて親しかった女の子...

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