category: ★白日夢 1/12
白日夢

(あらすじ)大学生の司は、彼女の美央と順調に付き合っている。 ある夏の日、友人に誘われて訪れた母校の中学で偶然、先輩の松岡と再会する。かつて司が好きになり、振られた相手だった。 気まずさから連絡を絶っていたのに、松岡から「昔のように付き合いたい」と言われ、戸惑いながら再び連絡を取り合う仲に。 自分には長年付き合っている彼女がいる、松岡に引き摺られることはない、それなのに彼に会う度に昔の想いが蘇る――。 Ⅰ■...
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ゆめうつつ 16

***「やっとくっついたわけね」 寝癖がついた頭をポリポリとかきながら、五十嵐がやれやれといった風に言った。 悪ふざけのすぎる五十嵐だが、彼が背中を押してくれたのもあったから松岡の告白を受け入れられたと言っても過言ではない。五十嵐への礼に地ビールを買って神戸へ戻った司は、寝起きらしい五十嵐に土産とともに松岡のことを報告した。「世話が焼ける」だの「めんどくさい奴」だの悪態をつかれたが、地ビールは気...
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ゆめうつつ 15【R】

入口からベッドまでのほんの数メートルすら我慢できず、部屋のドアが閉まるなりきつく抱き締められた。司の胸に松岡の胸が重なる。互いの動悸が生々しく伝わり、合わさった心臓がひとつになったかのような錯覚をした、 暑さと興奮で呼吸が荒い。息継ぎを許さないほど唇を押し付けられて、酸欠になりそうだ。下唇をついばむだけのものから、舌を絡めて口内を犯す深いものまで、夢中でキスをする。苦しさのあまり少しだけ俯くと、...
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ゆめうつつ 14

——— 笠原家の墓がある墓地は隣町にある。いつもは父の車に同乗させてもらうのだが、今日はひとりで行くので電車を使った。 寂れた無人駅に着き、そこからは汗を拭いながら徒歩で行く。出掛ける直前に母に持たされた仏花が暑さのせいで傷みそうだ。山へ続くひと気のない坂道をひたすら上り、時々木陰で立ち止まって持参したお茶で口を潤した。 墓地に着き、井戸で水を汲んでから墓を探す。足場の悪い迷路のような墓と墓のあい...
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ゆめうつつ 13

夏季休暇を取ったのは四日間。初日は祐太との約束、二日目は高校の同窓会、三日目は祖父母への挨拶と墓参り、四日目に神戸に戻る予定だった。今日は夕方から同窓会だが、祐太にも伝えた通り欠席することにする。祐太に会いたくないからじゃない。仕事で成功をしたり家庭を持った同級生たちの姿を目の当たりにしたら、祐太の家で感じたことを再び思い知らされて落ち込むだろうと予想できたからだ。器の小さい人間であることは分か...
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