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category: ★ひとりぼっちにさよなら  1/6

番外編5

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 *** それからしばらく絵を描くことをやめたのだが、何年も毎日欠かさず描いていた絵も三日も経てば描かないことに慣れてしまった。朝起きて、仕事をして、帰って寝る。ただそれだけの生活。なんとも味気なくてつまらないけれど、気持ちはとても穏やかだったと思う。苦しみの原因から離れるとこんなにも楽になるのだと知った。 ある日、夜中に何を求めるわけでもなくネットサーフィンをしていたら、とあるブログに辿り着いた...

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番外編4

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 *** 早朝、寝ている母親を起こさないように静かに身支度をして、空が白みだした頃に港へ向かった。加工場での仕事が始まるまでにまだ時間がある。少しでも絵を描いておきたいので、毎日早起きをして仕事が始まるまで港で絵を描くのが習慣だ。 家ではどうも描きにくい。早く夢を諦めて潔く漁師になるか、もう少し大きな会社にでも入って安定して欲しいと口癖のように言う母親が鬱陶しいからだ。 靄が掛かった朝の海は幻想的...

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番外編3

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 *** ついボーッとして手を止めてしまったところ、背後から「留衣ィ!」と怒号が飛んできた。「ボサッとすな! せいろ並べんかい!」「すみません」 海から揚げたばかりのカタクチイワシを、一気にパイプで吸い上げて加工場まで運ぶ。運ばれたイワシは新鮮なままボイルされ、せいろに並べると時間をかけて乾燥させる。そうするとしっかり味のついた栄養たっぷりの「いりこ」ができるのだ。俺の地元の島は、この「いりこ」の...

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番外編2

「留衣―、カラオケ行かないの?」 大学の帰りにクラスメイトに遊びに行かないかと誘われた。仲の良いグループで行くならまだしも、コンパみたいな誰が来るか分からないような集まりは苦手だ。俺は用事があるからとすぐに断った。 断ったところで時間を持て余した。バイトもないし、今のところ急ぎの課題もない。遊びに行くのも面倒だけど、まっすぐ家に帰る気にもなれない。どうせやることなんて食べるか寝るか、絵を描くしかな...

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ひとりぼっちにさよなら

仕事は順調で、妻も娘もいて順風満帆のはずなのに、疎外感と寂寞感を拭えない。 色褪せた日常の中、駅前広場で出会ったひとりの絵描き。 彼はいつも、もくもくと絵を描いている。 寂しい「僕」は、彼と彼の絵に興味がわき、そして惹かれた。 夫婦や親子の悩みを通した、ちょっとヘタレな年上攻と、意外と積極的な年下受とのヒューマンラブストーリー。※エブリスタ「溺愛/スパダリ/ハートフルなBL」小説コンテスト佳作。■1■2■3■4■5...

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