category: ★勘違いの恋 1/2
勘違いの恋
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*** 結局、僕はその牛タンの店でひとり食事をしている。 アホすぎる、間抜けすぎる、こんなに馬鹿馬鹿しいことってない。高室さんを信じてないわけじゃない。ただ僕は、不安なんだ。もし見つかったら偶然ということにしておこう。ひとり飲みするのが好きなんだってサラッと言う。本当は好きじゃないが。百円ショップで急きょ買ったキャップを深く被り、店の隅で牛タンビーフシチューを味わう。確かにこれは美味だ。 午後七...
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*** 木曜日の夜、家でDVDを見ながらふと思いついた。明日は金曜日だ。高室さんを誘ってどこか飲みに行こうか、と。『お疲れ様です。もう家にいますか?』 さっそく送ったメッセージに、二分後に返信があった。『お疲れ。今しがた着いたところだ』 えらくカタいのは気のせいだろうか。『明日の夜、良かったら飲みに行きませんか』 すぐに既読にはなったが、返信は暫くなかった。迷惑だったのだろうか……。そして、『明日の...
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すれ違いの恋 1
この大きな会社で、本社だけで何百という人数がいる中で、綺麗な女性社員もたくさんいるというのに、毎日あの人のことばかり見てしまうのは、幾度となく視線が合うから。そして視線が合う度に、あの人は優しく微笑みかけてくれる。 幸せ……。だけど、いまだ信じられない。 僕が男性を好きになるなんて。 *** 僕が入社と同時に係長に昇任した高室良彦さんは、社内男性人気ナンバーワンだと聞いた。顔良し、頭良し、性格良し...
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きっと俺は相当疲れているのだ。この二ヵ月、毎日深夜残業をしていたんだから無理もない。このままでは精神科に通わなければならないかもしれない。俺はゲイじゃない。早く正常な感覚を取り戻さなければ。なんでもいい。誰かどこかにいい女はいないのか。「高室係長ぉ」 出社一番、廊下で話しかけてきたのは、例の社内人気ナンバーワンの、「西田さん」「西野ですぅ。いい加減覚えて下さいー」「何か用かな?」「昨日、係長が突...
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